34.『許さなくていいから』
試すような速さであいつの指が俺に向かって伸びてきた。
「泥がついてる」
それが目尻の先でピタリと止まった。
「日向さん、そこ。左の頬」
泥を払うより先にあいつの手首を掴んだ。
黒い瞳が一瞬大きくなった。
グラリ、と地面が揺れた気がした。
触れた唇も、掴んだ肩も、ガチガチに硬かった。
「俺……」
「許さなくていいから、目を瞑れ」
上の睫毛が瞳を隠すと、あいつはふわりと力を抜いた。
33(twitterタグ #文字書きさんキスシーンを14文字で表現してください)を元に書きました。
(2019.4.19 twitter投稿)