77.『キスして』(名刺SSテキスト版)
面倒くさくなるのが嫌で言葉を選んだ。
「部活で忙しい。余裕がない。気持ちは嬉しいけど、ごめんな」……こんな感じ。
たまたま若島津に見られて、あいつは何も訊かなかったし、俺も何も言わなかったけれど、
飯を食って、風呂を済ませ、時間割を見ながら鞄に教科書を突っ込んでいたら、いきなり何の前触れもなくあいつが言った。
「キスして」
「キスって……。おまえ、ふざけてんのか?」
笑い飛ばそうと思ったのに、
言わずに終わらせるつもりだったのに、
先にあいつが笑ったりするから、
扉の向こうから聞こえてきた話し声が不意に途切れたりするものだから……。
限界、だと思った。
「その手の冗談は嫌いだ」
顎を持ち上げると、あいつから笑いが消えた。
「日向さん、俺、ね」
俺の名を呼ぶ唇は震えていた―――。
(2019.5.31twitter投稿)
『I love you』を小次健風に訳すと「今すぐキスして」になりました。
#Iloveyouを訳してみた https://shindanmaker.com/730931