150.『好きにならないと出られない部屋』(名刺SSテキスト版)
反町に背中を押され部屋に入った瞬間後ろに吹っ飛んだ。
バーンと派手な音をたて扉が閉まる。
「く、苦しい」
背中から呻き声がして、首を捻ると反町が俺と若島津に押し潰されていた。
「あ、ごめん」
二人同時に言って俺は反町の左の腕を、若島津は右腕を引っ張り上げた。
反町はズボンについた埃をパンパンと払い、「ったく」とだけ言い、直ぐにその場を立ち去った。
「日向さん、ごめん」
「え? なんでおまえが謝るんだ?」
「ごめんなさいっ」
ダーッと若島津が駆けていく。
その背中はみるみる小さくなっていった。
一人その場に取り残されて、そこでやっと気がついた。
扉には『相手のことを好きにならないと出られない部屋』と書いてあった。
「『ごめん』ってなんだよっ!『ごめん』って!」
叫んだ時には若島津はいなかった。
あれ以来、声をかける度、若島津に避けられている。
「反町、おまえのせいだからなっ!」
文句を言った俺に反町が言った。
「なんで?ちょこーっとやり方を考えるだけでいいじゃん。成功は約束されている」と。
(2019.10.10 twitter投稿)
小次健は『相手のことを好きにならないと出られない部屋』に入ってしまいました。
80分以内に実行してください。https://shindanmaker.com/525269