90.『梅雨の晴れ間』(名刺SSテキスト版)
「キスしていいか?」
彼の指が伸びてきて、「俺も」と目を閉じた。
「失うのが怖かった」
それにも「俺も」と言うと、彼は困ったような呆れたような息を小さく吐いた。
「『俺も』ばっかだな」
「だって……」
サーと梅雨の晴れ間の風が俺達を追い越していった。
「初めて会った日から日向さんしか見ていないから」
抱きしめると、微かに昨夜の残りの雨の匂いがした。
お題:抱きしめる http://shindanmaker.com/570790
(2019.6.14 twitter投稿)