24.『勿体ないだろ』(名刺SSテキスト版)
日向さんが言った。
なんのことか判らずに、ごしごしやり続けていたら「はぁー」と溜息をつかれた。
「何度書きなおしても同じなんだよ」
そういうこと、か。
「苦手なんだよね。作文とか感想文とか」
「作文はあった事を書いて、『楽しかったです』で〆ればいいし、感想文はあとがきを写して『感動しました』」
とかなんとか言いながら、日向さんが書く作文や感想文は妙な具合に個性的だ。
悪く言えば大雑把。だけど潔い。
そんな感じかな。
「日向さんは一発書きって言うか、書き直さないよね?」
「めんどくせーし。それに」
それに?
「時間が勿体ねえ」
「確かにね」
「そう思うなら、さっさと終わらせろ」
「先に寝てていいよ」
「いいって。セックスしてぇし」
「えっ!」
なんでこの人こうなんだ?
「今日は先にイかねえ」
そ、そんなストレートに……。
「…あっ…あっ……ああ、あっ……」
「………………っ」
「あ?……あ、あーーーー?」
もう?
息も整えずに新しいコンドームのパッケージを破こうとした日向さんに俺は言った。
「ゴムが勿体ないだろ?」
「?」
「何度やっても同じなんだよ」とは言わなかった。
(2019.4.10 twitter投稿)リメイク