27.『花』by松山(名刺SSテキスト版)
「綺麗だな」
こいつの口からそんな事を聞くなんて、何だか不思議な気がした。
日向は桜の花をフレームに収め、もう一度「綺麗だな」と言った。
たぶん、こんな風に恋人にも言うのだろう。
「土産?」
「や、別に」
「桜が似合う奴だよな」
「誰が?」
「若島津」
そんな顔するなって。
恥ずかしいだろ。
「いつか富良野にも遊びに来いよ。案内してやるからさ」
「何で俺がお前んとこに行かなきゃなんねぇんだよ」
「そりゃそーだ」
だけど、こいつらに見せたいなぁ、なんて、そんな事を思う俺は可笑しいだろうか。
「ラベンダーも似合いそうだろ?」
「バーカ。野郎に花なんか似合うかよ。美味いもん食わしてくれるってんなら考えてやる」
偉そうに。
「花みたいだ」とか思ってるくせに。
どうせ、「綺麗だな。もっと花を咲かせてやるか?」とか、恥ずかしい事を言ってんだろ。
で、若島津も若島津で頬を染めたりなんかして、それからこいつは……
「松山」
「え?」
「お前、顔、あけぇぞ」
(2019.4.13 twitter投稿)再録