42.『終わりにしよう』(名刺SSテキスト版)
高校二年の夏の終わり。
湿布の匂いがする部屋で、俺が伸ばしかけた手を引っ込めた距離とあいつが逃げようとした距離が同じだったから。
入り込んだ言葉の無い時間に、その後あいつがついた溜息に「終わりにしないか?」と俺は言った。
「いくら考えても同じなんだ。もう誤魔化せねぇ」
振り返ったあいつの瞳がゆらり、と揺れた。
「おまえもだろ?」
「日向さん、何を……」
おまえが踏み出せないなら、俺が距離を縮めるしかねぇよな。
「責任は俺がとる」
開け放した窓、夏の終わりの風が吹く静かな夜だった。
「日向さん、馬鹿だなぁ」
あいつがくれたキスと引き換えに俺は悩むのをやめた。
「もう、終わりにしよう」 #この台詞から妄想するなら http://shindanmaker.com/681121
(2019.4.26 twitter投稿)