57.『空を隠す』(名刺SSテキスト版)
彼がカーテンを開けた。
陽は西に傾きかけていた。
「何を考えているか当ててみようか?」
「別に何も考えてねえよ」
「勿体無い事した、とか思ってる? それとも、もっと優しく抱けばよかった、とか?」
手足を動かせなくなるまで彼を求めて求められ、部屋に籠もる匂いと空の青さのバランスの悪さに安心している、だなんて、俺は可笑しいだろうか。
「日向さん、カーテン閉めたら?」
彼はクククと笑って、青い空を隠した。
「すっげえ雨。どこにも出かけらんねえな」
(2019.5.11 twitter投稿)リメイク