76.『誘ってみる』(名刺SSテキスト版)
まあ、そのコにもよるだろうけど、誘うのは俺、だよな。
慣れというのは恐ろしい。
誘われてばかりなせいか、誘い方がわからない。
ああ、どーしよう。
ムラムラなんだけど。
その気になってくれないかなぁ。
チラッと横目で見てみたけれど、 プレミアの試合にかじりついてる目は真剣そのもので、同業者でありながらプレミアよりセックスな今の自分が恥ずかしいやら情けないやら……。
「若島津、今の見たか?」
……え?
「み、見たよ」
「すげえなぁ。やっぱうめえわ」
やっぱり全然その気はないみたい。
おとなしく試合が終わるのを待つ、か。
んー、終わってもその気にならなかったら?
仕方がない。その時はその時だ。
今日はそういう日だったということで。
「あー、面白かった。録画しといてくれて助かったわ」
「俺も見たかったから」
「さ、飯にするか」
彼はすっと立ち上がった。
「ちょっと早くない?」
「腹が減ったんだよ。さっさと食って風呂入ってセックスしようぜ」
……え? え?
「す、するの?」
「するに決まってんだろ。お前にその気がなくてもする。つーか、俺がその気にさせる」
誘い方を忘れてしまうわけだ。
「今日はその気になんの早えなぁ」
「その気になんかなってな……ッーーーーー!」
(2019.5.30twitter投稿)リメイク