91.『父の日の次の日に』(名刺SSテキスト版)
父の日には花を三つ送る。
一つは写真の中の父親に。
一つは母親に。
そして、もう一つは恋人に。
昇ったばかりの朝陽を背に受けて、慈しむように、労わるように花の向きを整える。
いつまでも見ていてぇなぁ……。
思いながら眺めていると、俺の視線にきがついて照れくさそうに笑った。
「おはよう。日向さん、いい朝だよ」
「変なヤツだと思ってんだろ」
「かもね」
言いながら近づいてきて、ポンとでかい手を俺の頭に置いた。
「頑張ってるな。小次郎」
ペロリと舌を出したあいつが愛しくてたまらなかった。
「ばーか。ぜんっぜん似てねぇよ」
(2019.6.17 twitter投稿)