107.『あと五分』(名刺SSテキスト版)
朝、目が覚めてべッドサイドに置いたスマホに手を伸ばす。
いつもより1時間早かった。
五分くらいメッセージをチェックして、隣にある寝顔にカメラを向ける。
眉も口元も少し緩んでいて、髪もグチャグチャで、だけど、脚は俺の動きをしつかり封じている。
「起きられないじゃないか」
盗み撮りした寝顔を見ていたら、
「あと五分」と彼が言った。
「あと五分、あと五分……」
繰り返す彼が可笑しくて、可愛くて、少し泣きそうになった。
どうしてこんなに好きなんだろう。
五分だけ泣いてもいいかな。
(2019.7.12 twitter投稿)