122.『恰好いい兄』by尊(名刺SSテキスト版)
捲った袖から伸びる引き締まった腕がたまらなく格好いい。
「にーちゃん、ご飯だよ」
「おお」
立ち上がった時に右肩が隠れた。
兄はそれをひょいと捲った。
「なんだよ、尊。俺の顔になんかついてるか?」
「別に。ただね」
遠い昔、学校で見た光景を思い出していた。
全小大会の翌日。
休み時間に校庭に行くと、やたらと袖を捲った人が多かった。
「友達に『尊くんのお兄さん格好いいね』って言われてさ。みんな真似しててさ。だけど、俺は恥ずかしくて」
言いかけたところで兄がニッと笑った。
「コツがあるんだぜ。ずり下がらないようにする。尊、特別に教えてやる」
俺のTシャツに手をかけた兄の手が温かくて、優しくて、大きくて……
「むかつく」
「んだよ、それ」
下げた目尻も、白い歯も、日に焼けた肌も、声も……
にーちゃん、格好よすぎるんだよっ。
(2019.8.17 twitter投稿)