127.『肉屋のコロッケ』(名刺SSテキスト版)
時計を見る代わりにテレビをつけたら見慣れた風景が目に飛び込んだ。
駅、商店街、グラウンド…。
画面の中の案内人とベッドの中の男を代わる代わる見る。
「随分経ってるんだけどな」
「同じ人には見えないね」
「うっせーよ」
顎が外れるくらい大欠伸をし、ボサボサの髪を掻く姿に、
テレビに映る無駄に格好いい彼も、だらだらのパジャマ姿の彼も、全部自分のもんなんだぜ、と思う俺は、かなりイかれていると思う。
「コロッケ食いてぇなぁ」
「なに? 急に」
「ほら」
画面の中の彼が肉屋の前で言った。
『ここのコロッケが美味いんですよ。帰省の時のお約束と言うか、若島津とよく買い食いをしました』
「なるべく名前を出さないように気をつけてたつもりなんだけどよ、おまえがいない時間を探す方が大変だ」
だれた欠伸に紛らすようにして、聞き流せるくらいの軽さで、俺の心を揺らす彼が好きだ。
(2019.9.7 twitter投稿)
今日の小次健
二人とも寝巻きのまま一日中ごろごろする。録画していたテレビを見ておいしいものを食べた。
#今日の二人はなにしてる https://shindanmaker.com/831289