125.『芸術の秋』(名刺SSテキスト版)
ホント俺って目付き悪ぃな、なんて思いながら「へのへのもへじ」に毛が生えたようなもんを描いて時間をやり過ごす。
右斜め前方で鉛筆を走らすあいつは真剣そのもので、「綺麗な顔してるよなぁ~」と眺めていたらバチッと目があった。
「見るなよ、バーカ」と目で言って、あいつは黙々と鉛筆を走らせた。
どんなの描いてるんかなぁ。
ヨッシャ。俺も真面目にやるか。
「日向さん、見せて」
「やだね。おまえが先に見せろ」
「やだ」
「見せろって」
「あんたが先に」
「あ」「あ」
げーっ。誰だよ、これ。
いくらなんでもひどくねえか?
こいつの目には鏡に写る自分がこう見えるのか?
「そっくりだろ?」
「や、そんなに不細工じゃねえし」
「人の絵に文句つけんなよっ!あんただって」
「そっくりだろ?」
「そんな顔してないよっ。もっと目だって鼻だって……」
「んだよ?」
「……か、かっこいい、よ」
バカップル炸裂した芸術の秋だった。
(2019.9.1 twitter投稿)リメイク