147.『響く』(名刺SSテキスト版)
「若島津」
マンションのエントランスホール。
後ろで響いた低い声に肩が上がる。
その声を聞き間違えることなどないと思いながら、腹の底から湧き上がる感情に直ぐに振り返ることが出来なかった。
「こっち向けよ」
恐る恐る振り返ると、彼はもう一度「若島津」と俺の名を呼んだ。
「なんだよ。幽霊見たような顔をしやがって」
彼は俺の顔を覗き込み、フッと短く息を吐いた。
キラリ、と微かに赤味を帯びた瞳が光る。
「なんで?」
「ここにいるか、か?」
「そう。だってあんた」
「口説きに来た」
「口説きにって……」
腰に回された手が熱かった。
「確かめろ」
押し付けられた唇は、すこし震えていた────。
(2019.10.3 twitter投稿)
『I love you』を小次健風に訳すと「今から貴方を口説きます」になりました。
#Iloveyouを訳してみた https://shindanmaker.com/730931