C翼二次創作/小次健love!  

2.『春の昼下がりに』(名刺SSテキスト版)

「ここで抱いてもいいか?」

俺の言葉にあいつは「え」と短く声をあげて、ゼンマイ仕掛けのおもちゃのようにゆっくり振り返った。

「ここでって……」

射し込む光が柔らかかった。
ざく切りにした野菜が鍋の中で踊る。

「たまには俺が作るよ」そう言って、危なっかしい手つきで包丁を使い、料理本に書かれた短い文を、いちいち復唱しながら鍋に野菜を放り込んで、
みていたら、
「抱きたくなったんだよな」
「さっき、腹が減ったって……」
「ほら、こんなになってるぞ」
「……」

腰を押し付けると、あいつは呆れたような諦めたような声で「きっかけが全然わからない」とコンロの火を止めた。

「俺もわかんねぇ」

唇から、指先から、髪の一本一本から感じる。

「おまえ、俺に惚れすぎだろ」
「なに言ってんだよ」

愛されてる自分を。



(2019.3.24 Twitter投稿)リメイク


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