4.『飯』(名刺SSテキスト版)
ただ、それだけで胸が震えた。
そう言って、あいつの口に入っていったものが、昨日も一昨日も食べたもので、
わざわざ白い飯を「美味い」と言うことに、余程腹が減っていたからか、とか、昨日と炊き方が違っていたのか、とか、
理由を探してみたけれど、きっちり計った米ときっちり計った水を炊飯器が勝手に炊いた米に理由なんか見つけられなかった。
だから、なんで自分が泣きたくなっているのかが分からない。
自分がどういう時に泣きたくなるのかも。
嬉しいとか、悲しいとか、悔しいとか、そういう時じゃなくて
こんな風に、当たり前の日常に……
ただ、その身を引き寄せて鼓動を聞きたい衝動にかられる。
「食べないの?」
あいつの箸の上の小さな飯の塊がポトリと落ちた。
ただ、それだけで。
(2019.3.25 Twitter投稿)リメイク