「あんた、なんかムカつくんだけど」
「おまえもすっげームカつくんだけど」
「なんで?」
「なんでだよ?」
「だって、ほら、みんな見てる」
「おまえを見てるんだろ?」
「あんたを見てるんだってば」
「おまえだって言ってるだろ!」
「あの、」
「んだよ」
「俺だけ見て」
クーーーーッ!
おまえはなんて可愛い奴なんだっ!
俺の目にはおまえしか写らねえ。
俺の耳にはおまえの声しか聞こえねえ。
俺の鼻はおまえの香りを嗅ぎ集め、俺の口はお前にだけ言うんだぜ。
「若島津、やろうぜ……ぐああっ!!」
俺を殴れるのはおまえだけだっ!
(2019.5.14twitter投稿)リメイク
[2回]
想いを言葉に変えて彼の唇に触れられたなら……。
夢は夢のままで終わらせないと。
疑いのないその寝顔に汚れた涙が落ちる前に。
「日向さん、ごめんね。こんな俺は見せられない」
吐き出した息をかき消すように風が窓を叩いた。
その音に彼の瞳が開いた。
「俺、寝言とか言ってたか?」
「言ってないよ」
「そっか……」
「おやすみ」と背を向けた俺に彼が言った。
「いくら夢の中で言っても変わらねぇよなぁ」
ただ、見つめ合ってキスをした。
確かめるように何度も見つめ合い唇を重ねた。
(2019.5.13twitter投稿)
あなたは小次健で、【夢にまで見た】をお題に140字SSを書いてください。小説等でもどうぞ。
https://shindanmaker.com/674263
[0回]
人の恋路に口を挟む趣味はないけれど……。
望めば手に入るのに、二人してしないから。
馬鹿みたいに一途で、痛いほど真剣で、
だから、
好きにならずにはいられない。
柄にもなく、守ってやりたい、と思ってしまう。
「日向はさ、好きな女とかいないのか?」
「え? 俺っすか?」
「先輩ぃ。日向さんのことより俺の話を聞いて下さいよ。……この前に。……あ、日向さん、部屋の網戸開けっ放し。虫が入るから先に部屋に行って閉めといてくんない?」
(2019.5.12 twitter投稿)
貴方は小次健で『好きにならないはずがない』をお題にして(140文字)SSを書いてください。
https://shindanmaker.com/375517
[0回]
「快晴だったのか……」
彼がカーテンを開けた。
陽は西に傾きかけていた。
「何を考えているか当ててみようか?」
「別に何も考えてねえよ」
「勿体無い事した、とか思ってる? それとも、もっと優しく抱けばよかった、とか?」
手足を動かせなくなるまで彼を求めて求められ、部屋に籠もる匂いと空の青さのバランスの悪さに安心している、だなんて、俺は可笑しいだろうか。
「日向さん、カーテン閉めたら?」
彼はクククと笑って、青い空を隠した。
「すっげえ雨。どこにも出かけらんねえな」
(2019.5.11 twitter投稿)リメイク
[0回]
体を繋げるということを、そこにある悦びを彼から教わった。
キスも彼から教わった。
『欲しいものは欲しいと言った方がいい』そう言ったのも彼だった。
サッカーの楽しさを教えてくれたのも彼で……。
「俺はあんたに何かを教えた事がある?」
胸の鼓動を聞きながら尋ねた俺に、彼は「はあ?」ととぼけた声を出し、それからクククと声を殺して笑った。
「なんか、変な事を言ったかな?」
「キスもセックスもみんなお前が教えたんだろ?」
「…俺、が?」
「堪えるのが大変なんだ」
「何を?」
俺の体はぐるりと回転し、するすると背骨の上を指先が降りて行った。
彼を受け入れる場所に届くと同時に背中でくぐもった声がした。
「いちいち感動するなんて格好悪いだろ?」
彼より先に言って、彼に言われる前に腰を上げた。
「早く挿れてよ。あんたが入ってくる瞬間がたまんないの」
セックスって……泣けるよな。
(2019.5.10 twitter投稿)リメイク
[0回]
泣ける映画を観た。
一人だったのに泣かなかった。
喉に詰まった氷のカケラは、溶ける事なくずっとそこにいた。
泣いちまったら笑えるだろうか。
声をあげて泣いたら口を開けて笑えるのか。
会いてえなぁ。
もう半年会ってない。
半年あいつに触れてない。
やっぱしんどいわ。
欲張りだから、声だけなんて無理。
半年で自分が変わった様に、あいつもちびっとウェイトが増えたとか、今だに背が伸びてるだとか、この目で確かめて、この腕に抱いて感じたい。
行っちまうか?
二日しかねえけど。
思っていたら電話が鳴った。
「日向さん、今から行く」
バタバタ部屋中掃除して、念入りに髭を剃って、酒と食い物を調達して、汗をかいたから風呂に入った。
半年ぶりに抱いたあいつは、恥ずかしそうに「久しぶりだから少し痛い」と言った。
だから、俺も「久しぶりだから早えし」と言った。
「久しぶりのくせにキス上手くなってんじゃん」
「久しぶりだからサービスしてんだよ」
いつの間にか氷は溶けて、溶けた氷は涙になって、俺が笑うとあいつも笑った。
(2019.5.5 twitter投稿)リメイク
[3回]
席替えをした。
今まで斜め後ろから見ていた背中が見えなくなった。
ツンツンと突かれたり、ゴンと椅子を蹴飛ばされたり。
振り返ると低い位置に顔がある。
「シャーペンの芯、無くなった」
なんでそんな近くに顔があるんだよ。
偉そうに踏ん反り返ってればいいじゃないか。
手の上に顎を乗せて、見上げる瞳に胸が苦しくなる。
席替えしてくれないかなぁ。
見られるのもしんどいし、見ていなかったらそれもなんだか……。
「蹴るなよ」
「悪ぃ、悪ぃ。脚が長くてよ~」
ムカつく。馬鹿日向!
(2019.5.5 twitter投稿)リメイク
[3回]
急に声が聞きたくなって若島津に電話をした。
「悪い、起こしちまったか?」
「そんな事ないよ」
「なんだ。起きてたのか?」
「なんとなくね。寝そびれた」
「ああー、親子丼が食いてえ」
「親子丼? なんでまた」
「お前の唯一得意な料理だし」
「失礼だな」
「明日の晩飯は親子丼にすっか」
「そうだね」
馬鹿みたいだと思うけど、俺達は同じ日に同じ物を作って同じ物を食べたりする。
時間のズレはどうしようもないけれど、同じ物を持ったりもする。
「明日は右足から靴を履く」
「いつも右からじゃなかった?」
間違えたり忘れないからそれでいいと思う。
「じゃあ俺は左手からシャツを着る」
「それもだな」
「今から水飲むよ」だの、「電話きったら爪を切る」だの、わざわざ言う事でもないのにわざわざ口にする。
「抱きてえ」と言ったら、恥ずかしそうにあいつはクスと笑った。
「昨夜、日向さんの夢を見たよ。トリノだった」
俺達は同じ夢をみるくせに場所は違うみたいだ。
たぶん、俺もあいつも会いに行きたい気持ちの方が強いからなのだろう。
(2019.5.3 twitter投稿)リメイク
[2回]
見送られるのが苦手な彼が振り返った。
見送るのが苦手な俺は、何も言えず開きかけた彼の口元を見ていた。
「あの、さ」
「なに?」
もう少しいてくれるの?
引き止めてしまいそうで自信がなかった。
彼は少し足を後ろにずらした俺の腕を引いて、盗むようなキスをした。
閉まりかけたスチールの扉をぐいと押すと、彼は俺より低い位置にいた。
「いてえっ」
「あ。だ、大丈夫?」
「腰、打った」
「ごめん」
「気をつけろ、バカ」
「バ、バカはないだろ? バカは」
「バカにバカと言って何が悪い」
「バカに言われたくない」
「バーカ、バーカ、バーカ」
「ガキみたいな事言うなよ」
なんだろ、これ。
俺は何をやってるんだ?
このバカが次に何を言って来るのか構えていると、彼はクッと目尻を下げてこう言った。
「またな」
夕陽を受けて駆け出す背中が子供の頃と重なった。
『またな』『また、あした』
「また……」明日と言えないのがつらいとこだけど、
「また、……日向さん、またねっ」
「おうっ」
こんな風に見送ったのは久しぶりだった。
(2019.5.3 twitter投稿)リメイク
[3回]
ベッドに寄りかかり、彼が「来いよ」と言った。
膝をついて向き合うと、「逆」と言われた。
彼は、俺の手をとって左手で胸の上を滑らせ、右手でぺニスを握らせた。
なんでこんな事をするのか、と訊ねたら、「なんでかなぁ」と答えた。
自慰の延長みたいで恥ずかしくてたまらなかった。
けれども、自分の手であって自分の手ではないような、そんな気がして、その手を払おうとは思わなかった。
「見てるか?」
「見ていない」
「見てみろよ」
「見ない」
こんな風に、彼は時々「見ろ」と言う。
そして、その後に必ず「俺の動きを忘れんなよ」と言うのだ。
翌日、一人になった部屋で、俺は彼の手を思い出しながら自慰をした。
ああ、そうか。そういうことか……。
今、俺の手は彼の動きをしている。
(2019.5.2 twitter投稿)リメイク
[3回]