「なんだぁ?これ」
「五分以上って…ちょっ!日向さんっ」
んー、んーー、んーーん、んー?
「はい、終わりー。ヤベェ、ヤベェ。五分いっちまうかと思ったぜ」
「え?…っ、っ」
んーー、んんー、んーー、んん?
「はい、終了。今度もギリだったな」
「あの…」
「んだよ、三回目いくぞ」
「ちょっと待ってよ、わけわかんない」
「なんで、わかんねーんだよ。おまえ、バカ?」
「バカってなんだよ、バカって」
「だーかーら、五分以上キスしなきゃ出られない、の反対を考えろよ」
え?これ、トータルでじゃないの?
「次、行くぞ!」
んー、んーー、ん、ん、んー…
「日向さん、小泉さんが、
タ、タケシッ!
「あ、あの…」
「し、仕方なかったんだ。出られなくなるところだったんだ。五分だぞ。五分も日向さんと…」
て、外からは開くのか?
「タケシ、おまえにもチューしてやるか?」
「え?日向さん、いいんですか?」(ポッ///)
「あんた、なに言ってんだよ」
「冗談だ」
「言っていい冗談とそうじゃない……んっ、ん、んんーんーー…
「あの、俺はどうすれば…」
小次健は『5分以上キスをしないと出られない部屋』に入ってしまいました。60分以内に実行してください。https://shindanmaker.com/525269
(2019.4.7 Twitter投稿)
[1回]
妹が母親になった。
「健もそろそろ……」
聞き慣れた言葉なのに、赤ん坊の泣き声や家族の笑い声、柔らかな日の光にさえ胸が痛んだ。
「また、言われてしまったよ」
零れた声は彼の笑い声に乗って春の風に変わった。
「これ以上確かなものがあるか?」
「愛されているね、俺」
「愛しているからな」
お題:こんなにも
(2019.4.7 Twitter投稿)
[3回]
快楽に溺れてしまう自分をみとめたくないのか、あいつは必死に声を押し殺す。
我慢した分だけ息が甘くなることに気づいていない。
「たまんねぇな。そういうおまえ」
顎に近づけた顔を後ろに引いて、ガッと突き上げると耐えきれずに「ああっ」と鳴いた。
鳴いたところで動きを止めたら振り返って俺を見た。
縋るような瞳を直ぐに隠したあいつの耳の後ろを舐め上げた。
軽ぅく腰を使う。
「どうしてほしいんだ?」
「…………」
「ねだれよ。俺がその気になるように」
漸く、そんな感じだった。
震える声であいつは言った。
「もっと、……深く……もっと、俺に……」
もっと言えよ。
もっと俺を欲しがれよ。
もっと、もっと、もっと……。
(2019.4.6 Twitter投稿)再録
[1回]
試合の前日はセックスはしない事。
最低限プライバシーは守る事。
家事の分担。
風呂の使い方。
同居を始めるにあたり、あれこれルールを決めた。
「シェアするんだからな。扶養家族じゃないんだから」
「家賃はいいけど、生活費の口座まではいいだろ?」
「駄目」
日向さん、こういう事は最初が肝心なんだよ。
放っておくと、俺に財布を出させなくなる。
どちらの名義で口座を開設するかで揉めて、結局、各々作って同じ額を預け入れした。
財布にカードが一枚増えただけだけで何となく嬉しかった。
生活するって感じがした。
「他にはないのか? 後から追加されるのは嫌だ」
「ないかな?日向さんは何か希望ないの?」
「うーん、そうだなぁ……。ゴミ、かな?」
「ゴミ?」
「ゴミと一緒に送り出すのはやめてくれ」
「そんな事しないって」
「いってらっしゃ~い。撮影頑張ってー」
「かったりぃなぁ~」
「文句言わない」
「へーい。じゃ、行って来るな。マイハニー♪」
何がハニーだよ。
だけど、出掛けのキスは蜂蜜に似ているかもしれないな。
あ、そうだ。蜂蜜切れてたんだ。
「帰りに蜂蜜買ってきてくれない?」
「了解」
「それと、ゴミよろしく」
「…………」
「何?」
「何でもねえ……。じゃな」
いいなぁ。
生活感ありありの後ろ姿。
あの背中を俺は守っているんだな。
(2019.4.5 Twitter投稿)リメイク
[2回]
「抱かせろ」
あまりにストレート過ぎて言葉がみつからなかった。
頭の上から降りてくる声に閉じたばかりの雑誌を開いた。
「嫌だったら殴ってくれ。殴ってトドメを刺してくれ」
絞り出すような声で彼が言った。
その後の言葉に俺は白旗を上げた。
「こうでもしなけりゃ諦めきれねぇ」
お題:無条件降伏
(2019.4.4 twitter投稿)
[1回]
選手寮の近くに錆びたブランコと滑り台しかない小さな公園がある。
彼は硬い蕾を見つめていた。
空はどんより灰色で、風も冷たい。
祈るような横顔に何か理由があるのだろうと思った。
明くる日も彼はそこにいた。
蕾はまだ硬い。
焦らすようにここ数日気温が低い。
雨、が降りそうだ。
ぽつり、と地面に染みができた。
気づいていてそうしているのか、彼の視線は蕾から離れなかった。
「濡れるぞ」
「え」と振り向いた頬に雨粒が一つ落ちる。
「泣いているみたいだ」
「俺が、ですか?」
クスリ、と彼が笑った。
「桜、なかなか咲かないな」
願い事でもしているんだろうか。
「必ず咲きますよ」と彼は言った。
それから五日後に桜は咲いた。
彼は携帯をかざし、満開の桜を写し取っていた。
「桜、咲いたな」
「届けようと思って……」
「誰に?」
「幼馴染に」
サーと風が吹く。
同時に彼の手の中で携帯が鳴った。
若島津が誰に届けたのかはわからないが、確かに桜は届いたみたいだ。
携帯を耳に当てる頬を花びらが撫でていく。
若島津所属クラブの先輩視点です。
(2019.4.3 Twitter投稿)リメイク
[3回]
冷蔵庫から食材を出して無造作に肘でドアを閉じる彼がいいと思う。
目が合うと「チャーハン」とか「パスタ」とか短く言う彼はいい。
「なーに、殿様みてぇにどん座ってんだよ」
そう言いながらクイと袖を捲る。
俺は蛇口から流れる水の音だとか、フライパンの上で油が跳ねる音を聞きながら部屋に漂う匂いを吸い込んでは味を想像する。
「サラダも食うか?」
「あると嬉しいな」
「なら、手伝え」
今日は「いやだ」と言ってみようか。
「コラ」と口には出さずにおたまを小さく振り上げる彼が好きだから。
小さければ小さいほどみつけた喜びは大きくて、「チャーハンの歌を歌ってよ」と俺は言った。
「ねぇよ。そんなもん」
彼の腰骨がゴンとぶつかってよろけるのが俺は好きだ。
(2019.4.3 Twitter投稿)リメイク
[2回]
まったりテレビをみていたら、空手家がバットを十二本蹴りで折った。
隣でむぐむぐ蜜柑を食うあいつに聞いてみた。
「なあ」
「なに?」
「おまえもできる?」
「俺はこんなバカな事はしませんよ。だけど……」
「だけど?」
「あんたのバットならいつでも折れますよ……」
「因みにあんたのボールも……」
ぐしゃあああああっ!
「あ、蜜柑、潰れちゃったぁ」
(2019.4.3 Twitter投稿)再録
[0回]
夏の大会が終わってしばらくの間、病院通いをした。
湿布や包帯の交換は、彼がしてくれた。
痛くないか? きつくはないか?
何度も聞いて丁寧に包帯を巻いてくれる。
「大丈夫。だいたいそんなかんじ」
「だいたい、じゃ困る」
彼の溜息に
「ちゃんと言え」
指先の柔らかさに
「日向さん、ありがと」
声が震えた。
お題:だいたいそんな感じ(2019.4.2Twitter投稿)
[2回]
「ハクシュン」
び、びっくりしたぁ。
「わりぃ。起こしちまったか?」
日向さんがグシッと鼻を啜った。
「寒いの?」
「いや、別にそういうわけじゃ……」
部屋の中はぐっちゃぐちゃ。
シーツもぐっちゃぐちゃ。
どうやら掛布団は俺が占領したらしい。
「平気か?」
「うん」
日向さんはまたグシッと鼻を啜り、「もうちょい寝てろ」と言った。
怠そうに立ち上がりかけた腰に手を回した。
「つかまえた」
「なんだよ。甘えてんのか?」
「かもね。少し温まったら?」
「そうだなぁ」
言いながら布団を整えてくれる。
甘やかされてるよなぁ、俺。
だって、自分のくしゃみで目を覚ましたことなんかないし。
(2019.4.1 Twitter投稿)リメイク
[1回]