C翼二次創作/小次健love!  

110.『お世話好き』(名刺SSテキスト版)

「日向さん、ネクタイはこっちの方が」
「そうか?」
「あ、そこ、髪跳ねてる。ちょっと屈んで」
「悪いな」
「はい。ハンカチ。それとティッシュも
「サンキュ」
ったく、世話焼き女房かよ。
「気をつけて」
「たぶん遅くなるから先に寝てていいぞ」
「わかった」
とかなんとか言いながら、待っててくれるんだよなあ。
「駐車場まで一緒に行こうか?」
「いいって、甘やかすな。クセになるから。じゃあな」
「じゃあね。……あ」
「なんだ?」
「ゴミよろしく」
またか……。
コイツ絶対忘れてるよな。
ゴミと一緒に送り出すのはやめてくれって言ったこと。
「やっぱり駐車場まで一緒に行く」
「ゴミも捨てなきやダメだしな」
……て、俺が持つのかよ。
ま、いーや。






(2019.7.20 twitter投稿)

【小次健】「甘やかされたい」#この台詞から妄想するなら
https://shindanmaker.com/681121






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109.『どーでもいい電話②』(名刺SSテキスト版)

日向さんからどーでもいい電話が来た。
焼きそばの話だった。
電話を切った後、急に焼きそばが食べたくなったので、コンビニに行って大盛いか焼きそばを買った。
カップにお湯を半分人れたあたりでポットがプシュだかプホだかとにかく嫌な音がした。
お湯が足りなかった。
人のことは言えない。
お湯が沸くまでこの湯を捨てよう。
あ、電話。
日向さんからだった。
「マヨネーズ買いにコンビニ行ったらよ、レジが混んでたんだわ」
「それで?」
「前にいたガキがカード買ってたんだけど、『カード下さい』の後が長えのなんの。何でかわかるか?」
「さあ」
「決めてねーのよ。ウンウン唸って、しかも、だ!」
「なに?」
「やっと決まったと思ったらガキのくせに万札出しやがった」
「レジは二つあるだろ?」
「ある。だが、しかし!」
「なにさ」
「隣のレジではばーさんがおでん買ってて、カードのガキと同じで……なんと!」
「カードのガキはばーさんの孫だった」
「おまえ、聞いてっか?」
「聞いてるよ。俺はあんたの焼きそばが気,なってしようがないよ」
「あっ! 忘れてた」





(2019.7.13 twitter投稿)リメイク








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108.『どーでもいい電話①』(名刺SSテキスト版)

「カップ焼きそばにお湯を半分入れたとこでよぉ、ポットのお湯が無くなっちまったんだよ」
「あー、あるある」
「しゃあねぇから湯を沸かしたら、浸かってる部分の麺がびろんびろんでよぉ~」
「一度、お湯を捨てればよかったのに」
「あ、そっか。次からそうするわ」
「次は先ずポットの中味を確認した方がいいと思うよ」
「だな。んじゃ、そうする。……あ」
「なに?」
「3分経った。じゃあな」
「日向さん」
「んだよ、今、湯きり中」
「用とかないの?」
「用事がなきゃ電話しちゃいけないかよ」
「別にそういうわけじゃないけど……」
「あ!」
「何?」
「マヨネーズがねぇ! 焼きそばにマヨネーズはかかせねぇんだよ」
「俺はそのままでいいと思うけど」
「ちょい買ってくる。じゃあな」
焼きそば、まずそう……。



(2019.7.13 twitter投稿)リメイク







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107.『あと五分』(名刺SSテキスト版)

朝、目が覚めてべッドサイドに置いたスマホに手を伸ばす。
いつもより1時間早かった。
五分くらいメッセージをチェックして、隣にある寝顔にカメラを向ける。
眉も口元も少し緩んでいて、髪もグチャグチャで、だけど、脚は俺の動きをしつかり封じている。
「起きられないじゃないか」
盗み撮りした寝顔を見ていたら、
「あと五分」と彼が言った。
「あと五分、あと五分……」
繰り返す彼が可笑しくて、可愛くて、少し泣きそうになった。
どうしてこんなに好きなんだろう。
五分だけ泣いてもいいかな。



(2019.7.12 twitter投稿)

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106.『ダイニングルーム』(名刺SSテキスト版)

「腹減ったな」
「腹減ったね」
「飯にするか」
「そうだね。たまには俺が作るよ」
「いいって。おまえ座ってろ」
「今日は俺が作る」
「そうか? 怪我すんなよ。玉子かけご飯でもいいぞ」
「いいから黙っててよ」
「わかったよ」
「火傷すんなよ。包丁気をつけろよ。冷蔵庫に指挟むなよ~」
ったく。心配症もいい加減にしろって
「日向さーん、醤油どこぉ?」
「日向さーん、砂糖がなくなりそうだよ」
「日向さーん、もっと小さい鍋ないの?」
「日向さーん……」
「あーっ! 面倒くせえ。やつば、おまえ座ってろ」
「美味いか?」
「美味いよ、すごく」
「俺の作る飯、毎日食いたいだろ?」
「日向さんが毎日食わせたいんだろ?」

(2011.7.11 twitter投稿)再録









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105.『トリノ・appartamento』(名刺SSテキスト版)

湿布の匂いを嗅ぐと泣きたくなる。
ばりっと封を切った瞬間にスースーした匂いがいきなり鼻の中に入ってきて、
まるで気持ちが剥き出しになるみたいだ。
あいつの肩には古い傷がある。
中学の時に無理をしたせいか、高校に入ってからも時々病院通いをしていた。
病院から帰って来たあいっからは湿布の匂いがした。
風呂上がりには俺が貼ってやったし、俺の脚もあいつが貼ってくれた。
「あーあー、結構腫れてんな」
試合中に脚を少し捻ってしまった。
人に手当してもらってる時は感じないのに、風呂上がりに一人で貼るのは何となく悲しかったりする。追い撃ちをかける
ように皺がよったりするとかなり凹む。
「お前に貼ってもらいてぇよ」
「下手くそ」
「え?」
「皺になってるじゃないか」
「おまえ……なんで?」
「貸して」
若島津は東の果てからいきなりやって来て、いきなり皺くちゃの湿布を貼り直した。
「何やってんだよ」
「ちょっと捻った」
「腫れてるね。痛いだろ?」
全然大したことなかった。
「痛い。すっげー痛くて堪んなかった。痛くて痛くて死にそうで、この匂いを嗅いだら泣きたくなった」
頬に触れられた掌から湿布の匂いがした。
剥き出しになった心は隠す必要が無くなった。
「泣きたくなる?」
「ああ。さっきまでと全然違うけど、やっばり泣きたくなる」
「俺も」





(2019.7.10 twitter投稿)再録


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104.『東邦学園高等部・寮』(名刺SSテキスト版)

「肩、痛いのか?」
「そういうワケじゃないけど、何となく気になる」
「どれ、俺が貼ってやるから来いよ」
「いいって。湿布くらい自分で貼れる
「後ろに目ついてんのかよ」
「なんだよ、それ」
「いいから貸してみな」
「ありがと」
「どういたしまして。……いつ見ても痛そうだな」
「痛くないよ」
「おまえ、左に鞄かけるのやめろよな」
「大丈夫だってば」
「俺がヤなの。痛そうで」
「…………」
「なんだ?」
「湿布より効きそう」
「何がだよ」
「これ、剥がしてくんない?」
「剥がすのか?」
「ここんとこさ、手を……や、やつばりいいや」
「こうか?」
「そう」
「スースーする。おまえの肩、メンタムみたい」




(2019.7.9 twitter投稿)再録




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103.『東邦学園中等部・保健室』(名刺SSテキスト版)

「若島津、日向さんが指切った」
「ええっ! なんで?」
「調理実習で調子こいてたらしくて包丁でザックリ」
もうっ。なにやってんだよ。
バカハカバカバカ……あっ! いてててて……。
痛い、痛い。
でも、保健室に行かなくちゃ。
俺が行ってどうなるもんでもないけど行かなくちゃ。
「日向さんっ、だ、大丈夫なの?」
「ちびっと切っただけ。……おい、おまえ、肘」
「肘?」
「肘、血がでてるぞ」
「え? ああ、階段で転んだ」
「なにやってんだよ。先に手当してもらえ。先生。すみません、こいつが先」
「いいです。日向さんの指が先」
「いいから。お前が先」
「いいって。これくらい」
「うるさい早く手当してもらえ」
「大丈夫だってば」
『もう、どっちでもいいから二人で適当にやっといて~』
「先生いなくなっちゃったよ」
「おまえのせいだからな。おとなしく腕を出せ」
「ごめん」
「なんですっ転ぶんだよ」
「なんでだろ」
「かっこわりぃ」
「だよね」
「マヌケ」
「ほんと、ほんと」
「気をつけろよ」
「わかったからそんな大袈裟に包帯巻かなくても……」
「そうか?おまえが指切ったら俺は骨折してたかもしれないぞ」
「なにそれ?」
「別に。なんとなく、さ」




(2019.7.8twitter投稿)リメイク


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102.『海の歌』(名刺SSテキスト版)

ところどころ歌詞を誤魔化しながら歌うのは、先月結婚した友人が花嫁に向けて自ら歌ったにも使われていた曲で、途中「おとちゃー
ん」と浦島太郎が……
「わかしまづーっ」
「は、はいつ」
イケネ。返事しちゃった。
「ンなとこいねぇでおまえも入れ」
やば。ばれてた。
「いや、俺は後で……」
「続き聞かせてやるから来いよ」と腕を引かれ、おろしたてのスーツが濡れた。
「アンタねえ」
「悪いな」
彼は少しも悪くなさそうに言って、さっきの続きを歌った。
いい声だよなあ。
深く張りがある。
ところどころ柔らかい。
甘さと苦味もある。
「声、やばいね」
「腰にくるか?」
自覚しているところがホント憎らしいけど……
たまんないね。





(2019.7.8 twitter投稿)
【小次健】
「もっと聴きたいな。君の歌」#
この台詞から妄想するなら2





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101.『七夕』(名刺SSテキスト版)

寮の玄関脇に笹竹が置かれた。
小さなテ1プルの上に短冊とペン。
書いたり書かなかったりその年によってマチマチだったが、たまたま若島津が忘れ物に気づいて部屋に戻り、ぼこっと空いた
時間に短冊に手を伸ばした。
「ごめん、ごめん」
言いながら靴を履くあいつに見つからないように短冊をポケットに入れた。
「日向さんは願い事書いた?」
「書かねーよ。お前は?」
「同じ。俺も書いてない。だって、見られたらイヤだし」
「だよな」
でもさ、とあいつが言った。
でもよ、と俺も言った。
交換した短冊には互いの名前しかなかった。
何をどうしたいかも書いていなかった。
「思いっかなくっさ。いるだけでいいって言うか……」
だよな。俺もそう思う。




(2019.7.7 twitter投稿)





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