一人じゃなかったことに調子づき長引かせてしまったおはようのキス。
まだ早朝だというのに窓の外では蝉の大合唱。遮光カーテンを突き破りそうな光も止める理由にはならず、無駄に体温を上げていると、大きな手でグッと胸を押された。
「どうした?」
「今日は買い物に行くって……」
「まだ七時前だぞ。店が開くまで何時間あると思っているんだ?」
「でも……」
キスが長くなったのはたまたまだった。今日の予定は頭にあったしそこまでする気はなかった。
でも、こんな風に震える睫毛を見せて煽られちまうとなぁ。
「セックスする?」
「しません」
「キスは?」
「それも終わり」
「俺がお願いしても?」
「…………」
「なぁ……」
ふわんと腕を回すと、若島津は「あっ」と熱のこもった息を吐いた。
首で感じる耳の温度もかなり高いし、コットン一枚隔てて伝わる心音も速い。
「したくないか?」
「……ひ、日向さんは?」
やっぱムラムラじゃねーか。このドスケベが。
「おまえは?」
「日向さんは?」
「おまえは?」
「だから、日向さ……もういいですっ」
コーヒーを淹れてくると立ち上がりかけた腕を引く。
よろけてベッドに尻をつくのを俺は逃さない。
「頼む。俺に抱かれてくれ。一回で終わらせる」
わざとらしくついた溜息が可愛くてしょうがない。
回したくてウズウズしている腕ごと抱きしめて、今日の予定を白紙に戻した。
いやというほど愛してやろう。
今日という日を全部おまえにやろう。
恥ずかしくて言えないなら何度でも俺が言おう。
「日が暮れるまで、なんなら明日の朝までキスして抱きしめ合おうぜ」
END
2021/8/9 twitter投稿