102.『海の歌』(名刺SSテキスト版)
ところどころ歌詞を誤魔化しながら歌うのは、先月結婚した友人が花嫁に向けて自ら歌ったにも使われていた曲で、途中「おとちゃー
ん」と浦島太郎が……
「わかしまづーっ」
「は、はいつ」
イケネ。返事しちゃった。
「ンなとこいねぇでおまえも入れ」
やば。ばれてた。
「いや、俺は後で……」
「続き聞かせてやるから来いよ」と腕を引かれ、おろしたてのスーツが濡れた。
「アンタねえ」
「悪いな」
彼は少しも悪くなさそうに言って、さっきの続きを歌った。
いい声だよなあ。
深く張りがある。
ところどころ柔らかい。
甘さと苦味もある。
「声、やばいね」
「腰にくるか?」
自覚しているところがホント憎らしいけど……
たまんないね。
(2019.7.8 twitter投稿)
【小次健】「もっと聴きたいな。君の歌」#この台詞から妄想するなら2