112. 『再会』(名刺SSテキスト版)
用意していた言葉は彼の唇に塞がれた。
何ヶ月ぶりだろう。
彼の鼓動を聞きながら、過ぎた時間を思う。
声が聞きたくて何度受話器に手をかけたろう。
触れたいと何度思ったろう。
「若島津」
何度その声で呼ばれたかったか。
「日向さん」
何度呼びたかったか。
だけど、次の言葉はなかった。
「…………」
「……日向さん?」
もう一度呼んでみたけれど、返事の代わりにズシリと肩が重くなる。
「そんな顔で寝るなって」
だけど、このまま夜を超えるのも悪くない。
それは自分だけに許された「彼」だから────。
(2019/7/22 twitter投稿)リメイク