114. 『スタンドの灯り』(名刺SSテキスト版)
シーツの上に身を投げ出す体をスタンドの灯りが照らしていた。
「沢山抱いたよな。お前のこと」
「ぜんぜん足りないよ」
欲張りだな、と言うと、あいつはフフと笑った。
「でも今日はおしまい」
「出し惜しみか?」
「そ」
「ケチ」
「先は長いだろ?」
言いながら笑う瞳が妖しく揺れた。
「綺麗だな」
「…………?」
「お前。……初めて抱いた時もそう思った」
「寮?」
「スタンドの灯りがさ、これとはちょっと違う色だったけど、お前を照らしてた。綺麗だなって思った」
「…………」
「痛かったろ? もっと優しくしてやればよかったなって思うよ」
「痛かったよ。すごく痛かった。……だけど、俺は日向さんがくれるものならなんでも欲しいから……」
ゆっくりと近づく唇が、スタンドに照らされた人いの色が、俺だけだと言ってくれす。
「あんまり折れを喜ばせるな。図に乗るから」
「それは困ったな」
少し笑いを含んだ息を吐いてからあいつは言った。
「そういうあんたも俺は欲しいんだ」と────。
(2019/7/27 twitter投稿)リメイク