134.『月見団子』(名刺SSテキスト版)
便利だよなぁ。
思いながら電子決済で団子と、ついでに缶ビールを買う。
さっき歩いて来た道をさっきより時間をかけて歩いた。
薄い雲を上手に避けて空に月が浮かんでいたからだ。
頬を撫でる風は温くもなければヒヤリとすることもなく、耳に届いた虫の声は煩くも寂しくもない。
「丁度いいなぁ」
なんの気なしに声に出し足を止めると」よお」と後ろから声をかけられた。
……え???
「夜中の散歩か?」
ここにいるはずのない男がここにいて当たり前のように言う。
「日向さん、……なんで?」
「散歩がてら会いに来た」
「散歩って……、飛行機に乗って?」
日向さんは「もしも俺の家があそこにあったら宇宙船だな」と月を指さした。
「団子食べる?」
視界に入った公園を指さし言った俺を、
「会っていきなり団子かよ」
彼は呆れたように笑ったけれど、
夜露に湿ったベンチに腰掛け二人で見上げた月は、泣きたいくらい丸かった。
(2019.9.13 twitter投稿)
秋の小次健:団子を食べながら月見をする
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