C翼二次創作/小次健love!  

『祭りのあと』(夏の小次健ふりかえり15)

↓ 『祭りのあと』



町内会の祭りの手伝いをした。
神社の祭りと違って真っ昼間にやる小さな祭りだ。

おでん屋のオッチャンが役員だかなんだかで、「三丁目はおでんにしよう。俺がやる」と言ったらしく、「遊びがてら小次郎も来い。バイト代弾んでやるから」
簡単に言うとこんな感じで借りだされた。

「夏におでんが売れるかよ」と思ったが、プロが作るおでんが安く食べられるわけで、三丁目のおでんコーナーには行列が出来た。遊び半分どころじゃなくコキ使われた。

鍋の底が見えかけて「やっと終わる」とTシャツの裾を引っ張り汗を拭いてたら「キャプテン」と頭の上で声がした。

「なんだ、おめえか」
「俺で悪かったね。おじさん、たまごとこんにゃくありますか?」
「もうねーよ」

オッチャンが答える前に言うと、
「キャプテンに聞いてない」とあいつは口をとんがらせた。

「大根ならあるよ」
オッチャンがが言う。
「大根かぁ…」
あいつが悩む。
「大根でいいだろ。うめえじゃん」
俺が言うと、「キャプテンは大根が好きなの?」とあいつが俺の顔を覗き込んだ。

「好きだ」
「他には何が好き?」
「おでんの具か?」
「おでんじゃなくてもいいよ」
「肉」
「あとは?」
「ラーメン」
「他には?飲み物は何が好き?」
「コーラ」
「コーラ?キャプテン、コーラ飲めるんだ」
「なんだよ。いちいちうるせえなぁ」

ごちゃごちゃやっているうちに祭りは終わっていたらしく、三丁目のおでんコーナーも片付いていた。

「二人で食べな。残りものだ。お金はいらない」

オッチャンが残ったおでんをくれた。

「いいんですか? キャプテン、大根だよ。キャプテンの好きな大根」
「おまえ、大根苦手なんだろ?」
「でも、キャプテンは好きなんだよね」

変なやつだなぁと思ったけれど、ちょっと顔をしかめながら大根を齧ったあいつがホントおかしなやつだと思ったけれど、
「大根、食えるじゃないか」と褒めてやったらめちゃくちゃ嬉しそうに笑ったから、
「他には何が苦手なんだ?」とか、「好きな食い物はなんだ?」とか、
さっきと逆のことをやってたらオッチャンが言った。

「仲がいいなぁ。ほんと仲良しだなぁ」

「そんなことねーよ」
俺は言ったし、あいつも「ふつーの友達です」と言ったけど、

「だって仲いいもんね」

内緒話をするように耳元で言ったあいつの横顔を沈みかけた夕陽が赤く染めていた。




END





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