『passport』(夏の小次健ふりかえり3)
パスポートの色が変わった。古いパスポートには穴が開いた。
そこに並んだスタンプの日付を見ながら一つ一つ指で辿る。
最初の頁をすっ飛ばして開く癖がついたのは、そこにいる18の俺が何度見ても恥ずかしかったからだ。
初めての申請は12歳の夏。
ヨーロッパ遠征のメンバーに選ばれてお袋と一緒に写真屋と役場に行き、バタバタと申請したのを覚えている。
そうそう、サインをする時、柄にもなく緊張したんだっけ。
中三の夏に使ったきり、最初のパスポートは17の時に期限が切れた。
「日向さん、手紙きてたよ」
風呂上がりにストレッチをしていると、頭の上から声をかけられた。
いつの頃からか風呂の時間がずれた。
あいつは夕飯を済ませると直ぐに風呂に入り、上がると姿を消す事もある。
行き先は、談話室だったり、他の奴らの部屋だったり、特に決まっているわけではない。
消灯近くになって部屋に戻り、音もたてずにストンと椅子に腰を下ろす。
教科書や問題集を広げながら、あいつは決まって俺に言う。
「おやすみ」
「さっさと寝ろ」と言われている様で、俺はカリカリと走る鉛筆の音を聞きながら眠りに就く。
学校でも部活でも普通に会話はしているし、部屋でもずっとこんな調子なわけじゃない。
毎日じゃないから余計にモヤモヤした。
最近のあいつは気まぐれにその日その日で違う。
共通しているのは、こんな風に頭の上や背中から話し掛けるという事で、それは俺も同じだった。
他の奴らに対しては柔和ではあったが、元来、あいつは気の強い男で、俺には遠慮なしだった。
一日一度は誰かを怒鳴り散らしている自分とは違い、我慢して溜め込んだ末に爆発するから性質が悪い。
ピシャリと跳ね退け口を閉ざすというのも厄介だった。
だけど、ガキの頃からの付き合いだ。
何もなかったふりをして、俺から声をかければ元に戻る。
喧嘩なんてそんなもんだ。先に痺れを切らしたからってどうってことはない。
少なくとも俺とあいつはそうやってきた。
こんな風になったのは、先に目を合わさなくなったのは俺の方で、かける言葉を見つけられずにいるからだ。
「ここに置いておく」
茶封筒を机に置く音がして、肩甲骨のあたりが温かくなった。
ぐいと体重をかけられて上体が折れていく。
「はい、ラスト。終わりにすれば?」
「・・・・・・」
「何?」
「いや、別に」
今日はどこにも行かないんだろうか。
「開けないの?速達だよ」
「今、開ける」
若島津はベッドに腰かけて雑誌を手にした。
全身にあいつの視線を感じる。
明らかに読んでいない速度で頁をめくる音。
鼻歌まで歌われて鋏を持つ手がカタカタ震えた。
封筒の中味は開ける前から判っていた。お袋の署名のある申請書と戸籍抄本だ。
「ちょっと出かけてくる」
「どこ?」
「コンビニ」
「今から?」
「まだ写真撮ってなくて・・・」
少しの間待ってみたが、あいつは何も言わなかった。
ポケットに財布を突っ込んで、コンビニまでの曲がりくねった坂道を降りる。
ザワザワと夜風に揺れる木々に、まるで後ろから話し掛けられている様だった。
ちゃんと言わないと。知っている事でも自分の口から言わないと・・・。
坂を下りきったところで、ザッザッと足音が近づいて来た。
誰のものかなんて見なくても判る。
朝も夜も、夏も冬も、いつも隣にあった音は俺の後ろでピタリと止まった。
「俺も行く。歯磨きなくなった」
「俺のを使えばいいだろ?」
「そうだけど・・・。腹も減ったしね。甘いものが食べたくなった」
若島津はそう言うと、俺を追い越して行った。
証明写真を撮るのは嫌いだ。
知らない誰かに脚だけ見られているのが気分が悪い。
レンズと向き合っている無防備な自分と外を隔てる物が布一枚というのも何となく落ち着かなかった。
「早く用意しとけばよかった」と、こぼしながら財布の中から金を出した。
いつの間に降り出したのか、アスファルトとタイヤの擦れる音が変わった。
カーテンの向こうから鼻歌が聞こえてくる。
少し調子ハズレで、ところどころ声が掠れていて、なんて曲かわからないくらい小さな小さな歌声だった。
「先、帰れよ。雨降ってんだろ?」
「少しね」
「待ってなくていいから。歯磨き買ってさっさと帰れ」
二人を隔てていた布を避けると、あいつはしゃがみ込んでいた。
「びっくりした~」
見上げた瞳が何か言いたげで、雨のせいかもしれないけれど、ゆらゆら揺れてるみたいだった。
言うなら今しかないと思った。
「写真は?」
「・・・まだ」
「早く撮れよ」
「・・・・・・」
留学の事も、その先の希望も、自分の口から言うより先にいつの間にか若島津の耳に入ってしまった。
一度だけ聞かれた事があるが、その時は「まだ決めてない」と言うしかなかった。
実際そんなに簡単な事じゃなかったんだ。
いくら援助があるといったって、少なからずお袋に負担をかけるわけだから。
「俺、留学するんだ」
「知ってるよ」
「上手くいったら卒業後は日本を出るかもしんない」
「上手くいくよ。あんたなら・・・」
これから先、こいつはどんな道を歩くのだろう。
今の自分があるのは、いつもこいつが側にいてくれたからで、俺はそれが当たり前の事だと思っていて、ずっと二人で走りたくて・・・。
だから我慢してきた。
こいつを失いたくなかった。
自分の欲望を押し付けて俺達の関係が変わるのが怖かった。
多分こいつは許してくれる。そう思うと余計に言えなくなった。
だってそうだろ?
俺もお前も同じ男だ。
「日向さんの脚・・・」
少しずつあいつの視線が低くなる。
白い額が隠れ、雨粒に濡れた黒髪しか見えなくなった。
「日向さんの脚、見てた。・・・すごいよね。どこまでも走って行けそうだ。どこまでも・・・」
止められなかった。
今だけでいいと思った。
腕を掴み引っ張り上げる。
ふいをつかれたあいつの身体が人形みたいにがくんと揺れた。
小さなボックスに引きずり込んで、抑え込んできた想いの分だけ抱きしめた。
「許したりするな。殴りたきゃ殴れ」
「・・・・・・」
「好きだ」
「・・・・・・」
「好きなんだよ、お前が」
若島津は抵抗しなかった。聞き返しも抱き返しもしなかった。
ただ、破裂しそうなくらい心臓がドクドクドクドクいっていて、それが自分のだかあいつのだか判らなくて、一瞬、神経がその音だけに集まった。
だらりと下りたままのあいつの腕に俺は怯んだんだ。
馬鹿だな、俺は。
お前はそういう奴なんだよ。
俺みたいにどす黒い感情なんか無くて、汚れたところのない奴なんだ。
呆れるくらい優しくて、それに俺は甘えていて、ずっとずっと甘えていて、だから言わなかったのに・・・。
本当に俺は馬鹿だ。
「俺、オトコ」
「知ってる」
「俺、あんたと同じ男だよ」
「判ってるよ!んなこたぁ百も承知だ。それでも好きなんだよ。お前とキスしたいとか、やりたいとか、そんな事ばっか思ってる変態野郎なんだよ。軽蔑したきゃしろよ。卒業したら別々になるんだ。どうせ・・・」
ふわりとあいつの唇が掠った。
それは触れるか触れないか、本当に短いキスだった。
「若島津・・・」
「勝手に終わらせんな」
カーテンがバサリと揺れてあいつが箱の外に出る。
「先帰る。五年も使うんだ。ちゃんと撮って来いよ。それと、こんな場所じゃなくて・・・。帰ったら俺が言う。だから、・・・あんたからキスをして」
笑ってしまうのは、こんな状況で俺は写真を撮ったという事だ。
心臓は口から飛び出そうなくせに、頭の一カ所が変な具合に冷静で、「写真だけは撮らないと」同じ言葉を繰り返していた。
きっとあいつはこう言うから。
「ちゃんと撮ってきた?」って最初に言うはずだから。
写真を手にして寮に戻る。
後ろ手で閉めた扉の前で棒立ちになる俺にやっぱりあいつは言った。
「ちゃんと撮ってきた?」
「おお」
ベッドに腰掛け腕を組み、その目は真っ直ぐ自分に向けられている。
枕元に飴の包み紙。
こいつがベッドの上を散らかす事なんか無かったし、時間の割に多いそれに次の言葉を見つけられない。
若島津は飴をガリガリ歯で噛み砕き、ゆっくりと手を伸ばした。
長い指、先の方が淡い桃色をしていて、消えない傷も一つ二つじゃなくて、この手で何球ボールを受けたのか、これからどれだけ受けるのか、そんな事をぼんやり思う。
「見せて」
言われるままに手渡すと、出来上がったばかりの写真を眺めて「変な顔」とボソリと言った。
「ごめん」
「何が?」
「なんでも」
扉の向こうでする足音や、隣の部屋から壁ごしに聞こえる笑い声。
いつもと同じ夜なのにここだけ時間が止まったみたいにやけに静かだった。
あいつは飴の袋に手を突っ込んで、取り出した小袋にピリッと切れ目を入れた。
だけど、それは口には入らずに、手の中でカサカサ音をたてるだけだった。
「馬鹿なのは俺だよ。・・・男なのにね。俺もあんたも」
写真を俺に戻しながら、「来れば?」と言われる。
「らしくないだろ?そういうあんた」
臆病な自分を見透かされている様で、脚が前に進まない。
だって、俺は知らなかったんだ。
誰かを本気で好きになる事がこんなに人を臆病にするだなんて。
若島津は少し腰をずらし、白いシーツをぽんぽんと叩いた。
俺が腰を下ろすのを待ってからあいつはゆっくりと口を開いた。
「好きだったよ、ずっと。あんただけをずっと見ていた。あんたの気持ちに気付かなかったわけじゃない。言おうともした。だけど、先に目を逸らしたのはあんただろ?だから俺もそうした。諦められると思ってた」
「・・・・・・」
「ごめん。俺、やっぱり日向さんが好きだ」
さっき、自分が言うからキスは俺からしろ、と、こいつは言った。
震える手で肩を掴んで自分に顔を向けさせる。
若島津の唇はやわらかくて温かくてオレンジの味がした。
ほんの少し、しょっぱかった。
重なり合った唇が少しずつ解けていく。
二人同時に隙間を開けて、同じ距離で舌を延ばして絡め合った。
背中に感じる手の大きさや同じ高さに位置する互いのパーツに、今触れているのは、ふくよかな胸も無ければ丸い尻も無い紛れも無い、自分と同じ男なのだと感じる。
笑っちゃうよな。こんなでかい男に惚れるなんて…。
シャツの下から手を突っ込んで白い肌を弄った。
胸の突起を軽く摘むと、若島津はピクンと跳ねて短く甘い息を漏らした。
いつからこいつを性の対象として見ていたかなんてはっきりとは判らない。
人並みに女の身体に興味もあった。
多分、始まりは子供じみた独占欲で、自分は女の裸を想い描いて抜いたりするくせに、同じ事をされるのが嫌だった。
こいつが女の胸に顔を埋めるだなんて許せない。そう思っているうちに夢の中で若島津を犯すようになった。
そんな自分が嫌で嫌で堪らなくて、必死に理由を探し、屁理屈こねてはみるものの、いつも同じ答えに辿り着く。
こいつを誰にも渡したくない。俺は若島津が好きなのだと。
夢にまでみたあいつの肌は、しっとりと掌に吸い付く様で、一カ所に集まる血液はどうにもこうにもしようがなかった。
「やべえ…」
「俺も」
言われて視線を落とすとあいつも窮屈そうだった。
鳩尾付近に唇を落とし、頭でシャツを持ち上げると若島津は自分でTシャツを脱ぎ、俺のシャツにも手をかけた。
考えるより先に腰がふれる。
同じ形の二つの性器が布ごしに擦れあう。
限界だった。
頭の中が真っ白になる。
驚いたのはあいつの口からその一言がでたという事だ。
「あんたのしたいようにして構わない」
余裕ありげな言葉ではあった。
だけど、声が震えていた。
それでも自分が望んでいるのだと、あいつはその先の俺を思ってくれていたのかもしれない。
「好きだから・・・」
ろくな知識も持ち合わせていない俺が、初めての行為であいつの身体に余計な傷をつけずに済んだのは、あいつが望んで身体を開いてくれたからだ。
男として屈辱的な行為だったろうに、恥ずかしくてたまらなかったろうに、拙い愛撫で感じてくれて、痛みを超えて俺に応えてくれた。
自然に反する結合だ。快感なんて与えられなかったと思う。
なかなか入っていかなくて動きが止まる度に、あいつは「何も考えなくていい」と言った。
「自分の中に出してほしい」と言った。
セックスがこんなに泣ける行為だなんて思わなかった。
「馬鹿だなぁ、あんた。気持ちいい事して泣くなって」
あいつの目も赤かかったけど、俺は泣いているのは自分だけだという事にしておいた。
堪えられないわけじゃなかったけれど、それを隠したりしなかった。
「すげえよくってさ、夢みてえなセックスで・・・」
あいつはパシンと俺の頭を叩いた。
でっかい男の掌だった。
だけど、他の誰よりも優しくてあったかかった。
「鼻かめよ」
ティシュを二枚、シュッシュッと取って、俺の鼻先に突き付ける。
「言っとくけど、俺がそうしたかっただけだから」
吐いた台詞もやたらと男らしかった。
出発までの毎日は、暇さえあればキスをして俺は欲望剥き出しだった。
ぶっちゃけ、やりたい盛りの男がずっと抑えていたわけで、壁さえぶち壊してしまえばそうなるのは自然な事だと思うわけだ。
若島津は全身性感帯みたいな奴で、少し触れただけで息の色を変える。
かなり舞い上がっていたし、あいつを気持ちよくさせられるのは自分が上手いからだと思い込んでいた俺は、調子にのりすぎて軽ーく手刀をくらったりもした。
ベッドであいつが積極的だったのはあの晩限りだ。
もちろん拒んだりはしないけど、俺が触れるより先にあいつが唇を寄せてくる事はまず無いし、自分からやりたいと言われた事もない。
若島津の性格からしてこっちの方がらしいわけで、だから、あの晩のあいつは本当にすごいと思った。
あいつは俺に頭を下げさせなかった。
俺はあいつに言うより先に許されていた。
出発前夜、背中に爪をたてながら、あいつは何度も何度も俺の名前を呼んだ。
不安に思わなかったわけじゃない。約束された未来なんか無かったわけだから。
だけど、一つだけ、これだけは何があっても変わらないと思えるものがあった。
「んな事していいのはお前だけだ」
「え?」
「いてえんだよ。見ろよ、背中」
あいつは「すご・・・」と驚いて、それからそこに指を当てた。
内から外に向かってゆっくりと動く指先は、引っ掻き傷を消している様にも思えたし、消えない様にと思っている様でもあった。
「痛い?」
「いてえっつったろ?すっげー、いてぇんだよ。いてぇんだけど・・・」
あいつはぷっと吹き出して、それから「もっかいつけてほしいとか?」と悪戯っぽく言った。
汗で湿った白い肌やところどころ絡まった髪が泣きたくなるほど愛おしかった。
夜中にこっそりシャワーを浴びて、夜も明けきらぬうちに着替えをする。
「ちょっくら世界を覗いてくるな」と言った俺に、あいつはとびっきりの笑顔をくれた。
昨夜の熱の残るベッドの中から届けられた言葉は、特別なものでもなんでもなかった。
多分、お互い言いたい事は山ほどあった気がする。
だけど、その時の俺達にはそれが精一杯だったと思う。
「手ぶらで帰って来たりするなよ」
「任せろ。お前をしょってっから大丈夫だ」
ヒリリとする爪痕を背負い、俺は真新しいパスポートに一個目のスタンプを押して貰った。
「やべえし。この顔・・・」
最初の頁には、始まりの日の俺がいる。
何度見ても顔から火が出そうだ。
こんな風に告った直後の顔を残すなんて。
思い出だとか、記念だとか、物に特別な意味を持たせるのはあまり好きじゃない。
古い写真を眺めて感傷的になるタイブでもない。
だけど、こいつだけは特別だった。
ユースを離脱した若島津を連れてジャカルタ行きの飛行機に乗った事も、卒業後イタリアへ渡った事も、人目を避けて何度もトリノと名古屋を行き来した日々も、角の捲れたパスポートは知っている。
上がったり下ったり、決して平らではなかった道が、ここには俺とあいつの五年間が詰まっている。
「忘れ物ない?」
「ない」
「パスポート持った?」
「持った。・・・あのさ」
「何?」
「十年パスポートになったんだぜ」
「今頃?」
若島津とは更新の年がずれている。
「これやるよ。お前にやろうと思って持ってきた」
穴のあいたパスポートを捲りながらあいつは声をあげて笑った。
「恥ずかしくないの?これ、告った直後のあんただよ」
恥ずかしいに決まってる。記念すべき童貞喪失した日の俺だ。
しかも、完璧こいつにリードされていた。
押し倒したのは自分だが、そうさせてくれたのはこいつだった。
「やっぱ返せよ」
「やだ」
若島津は長い腕をぐるりとまわし、赤くなった俺の顔を視界の外へと外してくれた。
背中でパラパラと紙の擦れる音がする。
「返せって」
「返さない」
若島津はクスクスクスクス長いこと笑っていた。
「これじゃ人に見せられないね」
「んだよ、そんなに笑うなって」
胸に感じる小さな揺れがピタリと止まる。
あいつはふぅと一つ息をはき、回した腕に力をこめた。
「あんたのバスポート、スタンプが多過ぎる。・・・・・贅沢言ったら罰が当たるね」
「言えよ。もっと、もっと欲張れって」
あいつは「充分欲張ってるよ」と笑った。
別れの朝はあいつはいつもより声を上げて笑う。
別れの朝はいつもよりよく喋る。
だから俺もそうしてやる。
その手を引いて連れて行きたい気持ちを必死に抑える。
「お前のも切れたらくれ」
「やだよ。だって・・・」
「何だよ」
「だって、朝までやった後の写真だし・・・」
「マジかよ」
「さあね」
ああ、また笑った。声をあげて。
こいつが切れるのは33か。長えなぁ・・・。
「あのさ」
「何?」
「もう、一人で押して貰うスタンプで埋まったりしねえから」
些細な事ではあるが、俺達にとって手に入れるのは難しかったりする。
あいつは古いパスポートを握りしめ、五年前と同じ事を言った。
「日向さんが好きだ。ずっと前からあんただけだ」
キスをして、抱きしめて、今は言うしか出来ないけれど、いつかなんてわからないけれど、
ありったけの想いを込めて俺は言う。
「いつか、必ず・・・」
あいつはコクンと頷いた。
何も言わずに一度だけ・・・。
END