眠れない
毛布を足せばよかったな。
でも、冬物はぜんぶ押し入れの奥に押し込んであるし、薄かろうが軽かろうが布団から出るよりここの方がましなわけで……。
ダンゴムシみたいに背を丸め、すりすりすりすり足を擦り合わせていると、
「うるせぇぞ」
隣のベッドから声をかけられた。
慌てて左足の甲にくっついていた右足を剥がしピンと伸ばした。
左足も同じようにした。
布団の中で「きをつけ」をし、そのあと日向さんに向けていた背中をシーツをつけた。
「ごめんなさい」
首だけ捻って謝った。
続く「うるさくして」は「うりゃあっ」と重なった。
え、と声を発する間もなかった。
バフッ。
ドンッ。
ガサッ。
「うっ」
掛け布団ごと移動してきた日向さんに乗しかかられ「うう」と呻くと、
また、
ガサッ。
バフッ。
ドン、はなかった。
「起こせよな」
「え?」
「明日。起こせ。ったく、変な時間に起こしやがって」
「ごめんなさい」
ふたつめの「ごめんなさい」は聞こえていたんだろうか。
「んー」と唸った三秒後には日向さんは眠りに落ちていた。
寒くて眠れなかったはずなのに、
あ、あつい。暑くて熱くて眠れない。
なんじゃこりゃ…