ある晴れた秋の朝
言い方もガバッと布団を剥ぐる動作も乱暴なのに、俺を見下ろす瞳は優しかった。
「……ン…いま何時?」
「八時」
「うそ!」
一分で顔を洗って、一分で着替えをして、朝食は? パンとかあったかな?
休み時間に購買に行くしかないか。
ああああー、やらかした。
若島津健一生の不覚。
無遅刻無欠席だったのにぃぃー。
ぐっちゃぐちゃにもつれた髪を撫でていると、ドンと肩を押された。
あ、天井が見える。
と思ったらバフと布団が腹に乗った。
「嘘だ」
「へ?」
「ぜんぜん間に合う。間に合うどころかあと十分寝られる」
むぅ。なんだよ、それ。
ギロリと睨みつけたはずなのに彼はププと笑った。
「可愛いなぁ」
む! 可愛いとか言うな。俺は男だゾ。
「ゴメンなぁ」
むむ。これっぽっちも反省の色が見えないんですけどっ。
「ちゃあんと起こしてやっからもっかい寝ろ」
眠気なんかすっとんだわ!
「日向さん、いつまで俺の腹に乗っかっているんですか。どいてください。起きますから」
「はいはいっと」
もうなんなんだよ。迷惑な人だなぁ……。
と思っていたら、今度は語尾を引っ張らずに「ゴメンな」と言って俺の顔を覗き込んだ。
無駄にイケボで腹が立ったけど、無駄にイケメン過ぎてすごく腹が立ったけど、この人にとことん弱いっていうかさー、なんだかんだで許しちゃうっていうかさー、
「起きる時間をちょい早くしたら、おまえと話す時間も長くなるかなぁと思ってさ」
なぁんて言われちゃうとね。
「日向さん、それじゃあ寝る時間が減るんですけど……」
「んー、それもそうだな。でも、十分くらい……」
のぼりたての太陽が広く細く、横や斜めに差し込んで、
壁も床も舞い上がった埃もキラッキラだった。
とりわけ眩しい瞳に自分を映し、
「いいですよ」と手を伸ばした。
なんじゃこりゃ。
通勤中クオリティ……
おはようございます。快晴です♪