書き納め? タイトルなし
あとで手を加えるかも、このままポイかも。
テーマはあったんですけど……うーん、、、
ネタメモだと思って頂けると助かります。
↓ タイトルなし。イチャイチャこじけん
「箱の中に入れっぱなしかもしれないけどな」
行き先も告げられず連れて来られた店先、センサーに感知される手前で彼が行った。
予め話はつけていたのだろう。
「日向です」
名前を口にしただけで奥の部屋へと案内された。
テーブルの上にはビロードのトレー。
その上に白金の輪が行儀良く並んでいた。
「お勧めのものをこちらでご用意させて頂きました。お気に召すものがなければお申しつけ下さい。直ぐに用意いたします」
「ありがとうございます」
店員に返した声の柔らかさを維持したまま彼は「俺が贈りたいんだ」と言った。
目に見える約束が欲しいと思ったことはなかった。
声で、匂いで、文字で、肌で惜しみなく想いを注がれてきたからだ。
これを手にすることで何か変わるだろうか。
思ったまま言葉にすると、彼は「変わる」と言った。
「何が? 今のままでも俺は……」
優しく「うん」と遮られ口を閉じた。
「うん。そうだな。……だけど、もっと重くなる。もっと大切にしなきゃいけなくなる」
彼はフッと短く笑って、そこに「俺がな」を付け足した。
幼馴染、親友……そんな言葉に隠しながら育ててきた恋だった。
食事をしても、酒を飲んでも、彼と二人でいることを珍しく思われることもなかったはずだ。
こんな風に、連れだって宝飾店に来たりしなければ。
「おまえの家族には俺から話す。俺が全ての責任をとる」
少し声のトーンをあげた彼は「ことがスムーズに進むとは思えねぇけどな」と続けた。
「カミングアウトするんだよ。時期が来るまでこの人には知らなかったことして貰わなきゃいけないけどな」
すみません、と小さく頭を下げられた店の人は静かに目尻を下げ、「お二人の幸せを願っております」とだけ言った。
◆◇◆◇◆
結論から言えば、大変だった。
世間を騒がせたし、マスコミにも追いかけられた。
公表するまでの時間も長かった。
俺に向かって振り上げた父の拳は彼の額に当たったし、母はその場では何も言わなかったが、俺が帰ったあと三日三晩寝込んだらしい。
今でも本業以外の理由でカメラやマイクを向けられることは少なくない。
だけど、そういう時は決まって彼が防いでくれる。
同じ男に守られている自分を情けなく感じることもあるけれど、
「話なら俺がしますよ。別に面白い話なんかないですけど」と記者にサラリと言う彼はすごく格好いいのだ。
「本当に変わった」
一年前に贈られた指輪を箱から取り出すと、彼は静かに俺の手を取り「いい方に、だよな」と言った。
「もちろん。大変だったけどね」
「そうだな。思った以上に大変だった」
「でも」「でもさ」
「なに?」「なんだ?」
「日向さんが先に」「おまえから」
三度続けて声が揃ったことに顔を見合わせ小刻みに肩を揺らした。
ひとしきり笑って息が切れたところで「そろそろ飯にするか?」と彼が言った。
「そうだね。日向さんは何が食べたい?」
「おまえは?……と言いたいところだが、昨夜のカレーが残ってるんだよなぁ」
「二日目のカレーは美味しいよね」
「そうか?」
「そうだよ」
肉や野菜から旨味が溶け出してコクがあるし、それに、昨日二人で作ったものを今日も二人で食べられるって幸せなことだよね。
END