恋の勝ち負け
肩に後ろから顎を乗せられ、硬い髪で首を擽られる。
「おもしろいよ」
「ふぅん」
「日向さん、興味ないでしょ。もしかして、怒ってる?」
ほったらかしにしていたわけじゃない。
この本を俺が読み始めた時、彼はゲームに夢中だったのだから。
「おまえこそ」
「俺?」
「厚いな。何ページあるんだ?」
「何ページかな?」
紙の端に親指をひっかけぱらぱらとページを送る。
途中、束になった紙が乾いた音を立てた。
同時に彼がククと笑った。
「俺の勝ち」
意識して本を閉じたわけではなかったけれど、手元が狂った時点で俺は負けていたのだろう。
「セックスしようぜ」
サラリと言われ、ドクンと心臓が跳ねた。
「続きは明日にしろよ」
「イヤだと言ったら?」
「言わせねぇよ」
耳に吹き込まれた息が熱かった。
痺れるような低音にそれまで頭の中で流れていた文字が跡形もなく消えた。
抗えないとわかっていながら悔し紛れに文句をつけた。
「自分だってゲームをしていたくせに」
「だよな。ごめん、悪かった」
「悪いと思っているなら……んっ」
勝手ばかり言って俺の心を乱して揶揄って、だけど、その唇は泣きたくなるほど優しい。
いつだって彼は余すところなく俺に情を刻んでくれる。愛の言葉を惜しむこともない。
だから彼の言う通りなのだ。
恋を自覚した十代からずっと俺は彼に負け続けている。
「さっき、俺の勝ちって言ったけど、負けたのは俺だった」
「え?」
「急にくる。『好き』がぐあーっと溢れることが。だから……」
続きは俺が言わせなかった。
首に腕を巻きつけ彼を引き寄せたから。
なんかまとまらかったので画像にしないでそのまま流します。
日向さんに「言わせねぇよ」と言わせたかっただけ〜♡