正月休み明けコジケン
またしても、なんじゃこりゃ、に。
↓ タイトルはありません。 正月休みを家で過ごした日向さん(おとな)
「母ちゃん、体に気をつけて。あんまり無理しないでくれよな」
「小次郎……」
「尊、家のことよろしくな。あと、受験ガンバレ」
「わかった」
「直子も頑張れよ。おまえは何かあるとすーぐ熱を出すからな。緊張するなっつーのも無理な話だが、普段どおりでいい。直子なら大丈夫だ」
「うん」
「勝は……ま、いーや」
「ええーっ。にいちゃん、ひどいっ」
「ウソウソ。勝も勉強とかいろいろ頑張れ。怪我や病気に気をつけろ。母ちゃんや尊や直子を助けてやってくれ。頼んだぞ!」
「わかった。まかせて!」
「それから……」
父ちゃん。また来ます。去年は最高の年だった。大きな怪我もしなかったし調子もよかった。シーズン通してキープできたし、父ちゃんのおかげかなぁと思っている。たまにさ、たまになんだけど、しんどいなって思うと声が聞こえるんだ。『小次郎、ガンバレ』って。だからさ、ありがとうな……いや、ありがとうございました。今年も頑張りますから見守っていて下さい。俺と……あと、気が向いたらでいいから若島津のことも。一時期ちーとばかし、あいつは調子崩したし。なんていうのかな。シンクロっつーか、あいつが調子いいと俺も調子いいんだ。だから、若島津のこともよろしくお願いします。それから、今年は報告することがあるかもしれない。時期ははっきりしないがそろそろかなぁと思っている。たぶん、驚かせてしまうだろうけど………」
「小次郎、なげーぞ。飛行機に乗り遅れたらどうすんだ。心配すんな。いつだって俺はオメェの味方だ。気づいてねぇと思ってんのかよ。父ちゃんをナメンナヨ! まぁ、受け入れてもらうのは難しいとは思うがな。……当人じゃなくて周りにだ。俺としちゃあ相手に不満はねぇんだわ。さすがに気づいた時は驚いたけどな。だってよぉ、真面目に宿題やってんなぁと思って見ていたら………」
「や、あれは。……えっ! え? と、父ちゃん、知ってたのか?」
「おう。知ってたぜ。がっつり見させてもらった」
ま、マジかよ……。
「と、とにかく今年も頑張ります。ごめんなさい。すみません。よろしくお願いします。頑張ります。頑張りますのでごめんなさい。許してください。許されなくても俺は変わらねぇけど。だって、それしか考えられねぇし。あいつしかいねーし。あいつじゃなきゃダメだし…………」
◆◇◆◇◆◇
「つーことがあったんだわ」
「なに? 初夢の話?」
「いや、リアル」
「またまたぁ〜」
「嘘じゃねぇって。ホントに声が聞こえたんだ。父ちゃん、ぜってーいた。ぜんぶ知ってた」
「ぜんぶって?」
「ぜ、ぜんぶ」
「……………」
「す、すまねぇ……。けど、さすがにあん時はやべぇなって思ったけど、なんつーか、よかったかもしれねぇ。覚悟決めたって言うかさ、父ちゃんに『ケジメつけろ』って言われた気がする。だからさ………おおっと、いくら父ちゃんでもこっからは見せられねぇ!! 家族サービスはちゃんとした。因みにコイツもした。すげぇ我慢したんだ。だからいいだろ? イタリア帰る前にちょこっと旅行したって。旅行ったって二泊だけだ。しかも成田。ギリギリまで一緒にいたいからな。コイツが正月番組の出演を受けたりしなければトリノに連れていけたんだ。けど、受けちまったもんはしょうがねぇ。……人気者だからな。スターなんだわ。なんたって『美しすぎる守護神』様だからな。ファッション雑誌の表紙を飾ったこともあるんだぜ。メンズエステのCM。あれはやべえ。時計のもカッコイイぞ。車のはさすがに金かかりまくってる。スポンサー様だからな。話がずれたが、とにかくここから先は見せられねぇ。てか、見せたくねぇ……」
「…………あ、あの?」
「な、なんだよ?」
「日向さん、大丈夫? 熱、とかない? どこか痛いところとかない?」
「た、たぶん無い」
「ならいいけど……」
「うん……」
「よかった」
こういうところなんだよなぁ。
何を言っても何をやっても受け止めてくれるんだ。
でさ、ふんわり笑って少し距離を縮めたり、さりげなーく体の一部分を俺にくっつけたりして待っていてくれるんだ。
「愛してるぞ」
「えっ。なに? いきなり」
「言いたくなった」
でさ、でさ、
はにかみながら「ありがと」なんて言うんだぜ。
たまんねぇよなぁ。
礼を言わなきゃならねぇのは俺の方だよなぁ。
「なぁ」
「なに?」
「俺に預けてくれねぇか? ……しようぜ。結婚」