C翼二次創作/小次健love!  

43.『同居二週間後』(名刺SSテキスト版)

同居を始めてあいつが文句を言うようになった。
たいした事じゃないんだけど、風呂が温かったとか、ゴミはちゃんと分別しろとか、日常の中にある小言に寮にいた頃を思い出した。
洗濯物の干し方とか、掃除機のかけ方とか、料理一つ満足に出来ないくせして文句だけは一人前で、しかも、几帳面なくせしてどこかスッコーンと抜けてるんだよな。
料理も洗濯も65点でこなす俺にしてみれば、0点100点みたいなこいつの方が手がかかると思うのだが……。

まあ、離れている間は文句一つつけなかったしな。
こんな風に難癖つけられるというのも悪くない。

「これは燃えるゴミか?」

よれたゴムを見せると、あいつは耳まで赤くして、「無造作に捨てるなよ」とゴミ箱を奪取した。
だからと言って、ゴムはともかくティッシュまで新聞紙に包まなくてもいいんじゃねえか?
てか、なんでそんなにしげしげとゴムを眺めてんだ?

「あの、さ」
「なんだ?」
「ゴミが出るから使わなくてもいいんだけどさ」
「は?」

まさか、こういう誘われ方をするとは思わなかったな。

「昨夜あんだけやったのに足りなかったか?」
「あ、明日の分だよっ!」

はい~?
明日の分てなんですかぁ?
寝だめ、食いだめ、やりだめは出来ねぇんだよ。

「俺ってそんなにいいか?」
「う、自惚れるな」

自惚れるだろ、普通。
あんなに爪たてられたらさ。



(2019.4.27 twitter投稿)


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42.『終わりにしよう』(名刺SSテキスト版)

過ぎて行く季節と共に終わらせた。

高校二年の夏の終わり。
湿布の匂いがする部屋で、俺が伸ばしかけた手を引っ込めた距離とあいつが逃げようとした距離が同じだったから。

入り込んだ言葉の無い時間に、その後あいつがついた溜息に「終わりにしないか?」と俺は言った。

「いくら考えても同じなんだ。もう誤魔化せねぇ」

振り返ったあいつの瞳がゆらり、と揺れた。

「おまえもだろ?」
「日向さん、何を……」

おまえが踏み出せないなら、俺が距離を縮めるしかねぇよな。

「責任は俺がとる」

開け放した窓、夏の終わりの風が吹く静かな夜だった。

「日向さん、馬鹿だなぁ」

あいつがくれたキスと引き換えに俺は悩むのをやめた。




「もう、終わりにしよう」 #この台詞から妄想するなら http://shindanmaker.com/681121
(2019.4.26 twitter投稿)


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拍手ありがとうございました

こんばんは。
名刺SSテキスト版は連載が始まるまで№50までいきたいです。
連載中はテキスト版の更新はお休みさせてください。(ごちゃごちゃになってしまいますし)
でも! もしもコメントを下さる方がいらっしゃいましたら途中に拍手レス記事は挟みますので♪
連載中のカテゴリを用意しますのでそちらからご覧頂くことになります。
反応を見ながら何日か分をまとめてSSblogにもUPするかもしれません。
twitterでフォロワーさんから単語3つを頂戴して文章を書く、というタグをみつけたので、そちらも時間をみて書こうと思っています。

☆拍手ありがとうございました。励みになります。

↓ メッセージのお返事です。

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40.『苦手な言葉』(名刺SSテキスト版)

通帳を差し出す手が少し震えていた。
だから、思い切り偉そうにした。
返済する時も偉そうにした。
だって、あいつも俺も男だから。
「ありがとう」とか、「ごめん」とか、言うのも言われるのも得意じゃない。

俺が「ごめん」と言うのはあいつの寝顔にだけで、「ありがとう」も上手く言えなくて、いくら言っても足りないから、余計口に出せなくなる。

ちっちぇ事でならいくらでも言えんのにな。

「ごめん。石鹸無くなった。持ってきてくれ」
「はい」
「ありがとな」

ほら、な。



(2019.4.25 twitter投稿)リメイク



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39.『春の風』(名刺SSテキスト版)

風の強い一日だった。
ドアを開ける度に吹き込む風に廊下はザラザラ白くなっていた。

「すごいね」

スリッパの裏で確かめているのが可笑しくて、俺もやってみた。
左足を軸にしてコンパスの動きをする。
半円まではきつかったが、割と綺麗な曲線を描いた。

クククと肩を震わせて、「何やってんだよ」と笑うこいつに触れてみたくて、一回転してよろけてみようか、なんて馬鹿げた事が頭に浮かんだ。

「どうせなら一回転してみてよ」
「え?」
「じょーだんだって。あー、喉がイガイガする。うがいしよ」

先を行く背中も、笑い声も、いつもと変わらなかった。

だよな。ありえねえって。

最近俺はきっかけばかりを探している。



(2019.4.24 twitter投稿)リメイク




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37.『遅刻だ』(名刺SSテキスト版)

やべえっ!二度寝したっ!

「おい、若島津、起きろっ!」
「んぁ?」

3秒で着替えて、10秒で顔を洗い、30秒で歯を磨いた。
パンを齧りながらダッシュする。
今週は「遅刻撲滅週間」
1秒でも遅れると門が閉まる。

「日向さん、早く、早く!」
「ま、待て。鼻から牛乳がっ、口からパンがっ」

「あ。パンくず」

あいつの指が口の横をかすって、それをペロリと舐められて、口からパンと一緒に心臓がっ!

「早くしろってばっ!」
「おおおおおおおうっ!」

ガシャーン!

「日向ぁ。若島津っ! お前らは朝練のない日はマトモに登校出来んのかっ!」

「すいませーん」「すいませーん」

「昨夜、ちょっと羽目外しすぎたな」
「あんたが調子にのるのが悪いんだろ?」

「なーにをコソコソ言ってるんだぁっ!」

「すみませーん」「すみませーん」

「あ。こっちにもパンくず」

あいつの指がまた掠った。
で、またペロリ。

「お前も牛乳ヒゲ」
「ウソッ」

でっけー掌が口元を覆って、形のいい鼻の上、真っ黒な目ん玉が真ん丸くなって、可愛いったらありゃしない。

「ウッソー」
「もう、びっくりするじゃないかぁ。日向さんたら、やだなぁ~。もう~」

「…………。は、早く教室入れ」

「ウィーッス」「はーい」



(2019.4.22 twitter投稿)再録





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36.『植木屋のおじさん』(名刺SSテキスト版)

チョキン、チョキン、チョキ、チョキ。

「若、こんな所にいらしたんですか? 危ないですから、部屋に入りましょう」
「やだよ。だって、葉っぱ切るの見たいもん」
「我儘言わないで。犬山が叱られてしまいます」
「ちぇーっ。つまんない」
「さ、行きましょう。……おや、紙飛行機ですか?」
「うん。でも、あんまり飛ばないの」
「どれ、犬山が作って差し上げます。一回飛ばしたらおしまいですよ」
「わかった」

ひゅう~、パスッ。

「飛ばないよ」
「おかしいですねぇ」

「坊ちゃん、私が作って差し上げましょうか?」
「いいの?」

植木屋のおじさんの作った紙飛行機はすごいんだ。
ぴゅーって飛ぶの。
ながーく飛ぶの。

「うわぁ、すごい!」
「でしょう? 倅が好きでねぇ。誰にも教えちゃダメですよ。さ、お部屋に戻って下さい。危ねえですからね」
「わかった。ありがとう、おじさん」



「日向さん、遊んでないで早く宿題終わらせなよ」
「うーん、やる気でねぇ」

日向さんはルーズリーフを一枚外した。

「いてっ。何、遊んでんのさ。ガキみたいな事して遊ぶなって……あ、これ、オリジナル?」
「おお。すっげー飛ぶだろ?」

「倅」
「は?」
「植木屋のおじさんの言ってたのって……」
「なんだよ、それ。ぜんっぜん分かんないんだけど」
「秘密。誰にも教えちゃいけないんだ。約束だから」



日向父、植木屋妄想
(2019.4.21 twitter投稿)リメイク







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