やべえっ!二度寝したっ!
「おい、若島津、起きろっ!」
「んぁ?」
3秒で着替えて、10秒で顔を洗い、30秒で歯を磨いた。
パンを齧りながらダッシュする。
今週は「遅刻撲滅週間」
1秒でも遅れると門が閉まる。
「日向さん、早く、早く!」
「ま、待て。鼻から牛乳がっ、口からパンがっ」
「あ。パンくず」
あいつの指が口の横をかすって、それをペロリと舐められて、口からパンと一緒に心臓がっ!
「早くしろってばっ!」
「おおおおおおおうっ!」
ガシャーン!
「日向ぁ。若島津っ! お前らは朝練のない日はマトモに登校出来んのかっ!」
「すいませーん」「すいませーん」
「昨夜、ちょっと羽目外しすぎたな」
「あんたが調子にのるのが悪いんだろ?」
「なーにをコソコソ言ってるんだぁっ!」
「すみませーん」「すみませーん」
「あ。こっちにもパンくず」
あいつの指がまた掠った。
で、またペロリ。
「お前も牛乳ヒゲ」
「ウソッ」
でっけー掌が口元を覆って、形のいい鼻の上、真っ黒な目ん玉が真ん丸くなって、可愛いったらありゃしない。
「ウッソー」
「もう、びっくりするじゃないかぁ。日向さんたら、やだなぁ~。もう~」
「…………。は、早く教室入れ」
「ウィーッス」「はーい」
(2019.4.22 twitter投稿)再録
[4回]
チョキン、チョキン、チョキ、チョキ。
「若、こんな所にいらしたんですか? 危ないですから、部屋に入りましょう」
「やだよ。だって、葉っぱ切るの見たいもん」
「我儘言わないで。犬山が叱られてしまいます」
「ちぇーっ。つまんない」
「さ、行きましょう。……おや、紙飛行機ですか?」
「うん。でも、あんまり飛ばないの」
「どれ、犬山が作って差し上げます。一回飛ばしたらおしまいですよ」
「わかった」
ひゅう~、パスッ。
「飛ばないよ」
「おかしいですねぇ」
「坊ちゃん、私が作って差し上げましょうか?」
「いいの?」
植木屋のおじさんの作った紙飛行機はすごいんだ。
ぴゅーって飛ぶの。
ながーく飛ぶの。
「うわぁ、すごい!」
「でしょう? 倅が好きでねぇ。誰にも教えちゃダメですよ。さ、お部屋に戻って下さい。危ねえですからね」
「わかった。ありがとう、おじさん」
「日向さん、遊んでないで早く宿題終わらせなよ」
「うーん、やる気でねぇ」
日向さんはルーズリーフを一枚外した。
「いてっ。何、遊んでんのさ。ガキみたいな事して遊ぶなって……あ、これ、オリジナル?」
「おお。すっげー飛ぶだろ?」
「倅」
「は?」
「植木屋のおじさんの言ってたのって……」
「なんだよ、それ。ぜんっぜん分かんないんだけど」
「秘密。誰にも教えちゃいけないんだ。約束だから」
日向父、植木屋妄想
(2019.4.21 twitter投稿)リメイク
[2回]
初めてじゃねえょな? 痛ぇ……。
twitterタグ #文字書きさんキスシーンを14文字で表現してください。
(2019.4.19 twitter投稿)
[0回]
「日向さん」
試すような速さであいつの指が俺に向かって伸びてきた。
「泥がついてる」
それが目尻の先でピタリと止まった。
「日向さん、そこ。左の頬」
泥を払うより先にあいつの手首を掴んだ。
黒い瞳が一瞬大きくなった。
グラリ、と地面が揺れた気がした。
触れた唇も、掴んだ肩も、ガチガチに硬かった。
「俺……」
「許さなくていいから、目を瞑れ」
上の睫毛が瞳を隠すと、あいつはふわりと力を抜いた。
33(twitterタグ #文字書きさんキスシーンを14文字で表現してください)を元に書きました。
(2019.4.19 twitter投稿)
[1回]
許さなくていいから 目を瞑れ
twitterタグ #文字書きさんキスシーンを14文字で表現してください。
(2019.4.19 twitter投稿)
[0回]
「なんだよ。俺の顔になんかついてるか?」
「別に。……ただ、いい男だなぁと思ってさ」
彼は一瞬目を見開き、それから肩を震わせ「ククク」と笑った。
テーブルに映る影が、歌うように揺れる。
「春は柔らかいね」
「なにがだ?」
「いろんなものが」
また、彼が笑った。
「散歩でもするか」
影も揺れた。
(2019.4.18 twitter投稿)再録
[1回]
頬というか、口元というか、
温かいような、擽ったいような……
気づかれずにする自信が持てず、わざとらしく寝返りをうった。
壁に写った影が明けきらない日の光を受けて揺れた。
「言ったら何か変わるかな」
背中で聞いた声も揺れた。
「俺もだ」
「え?」
「だから言う。たぶん、いい方に変わる」
(2019.4.17 twitter投稿)
[1回]
前方に伸びる道路は現実へと続く。
春にしては重い雲。
車窓を流れる景色は冬の名残を残していた。
身体の奥に残る彼の感触に喉が詰まる。
何度、肌を重ねても、何度愛を囁かれても、もっと、と思う。
「インター下りると切り替わるんだけどな」
肺の底から一つ息を吐き、ステアリングを握り直した。
(2019.4.16 twitter投稿)
[4回]
寮から学校まではゆっくり歩いて10分。
傘立てに並んだ傘がいつもより少なかった。
たいした雨じゃないけれど、濡れた緑がとても綺麗で、玄関で傘を二本手にして待った。
日向さんは、「傘、いらねえだろ? 帰り、忘れそうだし」と言ったけれど、「俺が覚えているから大丈夫」と差し出した。
珍しく俺の後ろを歩くので、振り返ると、驚いた様な顔をして、「なんでもねえ」とボソッと言った。
「なんでもねえけど……、もうちょいゆっくり歩こうぜ」
クラスメイトに何度か声をかけられて、追い越していく背中を眺めながら、俺達はゆっくりゆっくり歩いた。
「……好き」
「……は?」
「雨が……好き。傘をさして歩くのが……好き」
この頃、俺は雨や風、日の光とかあれやこれや引っ張り出して「好き」と言う。
「俺も、かな。お前と傘をさして歩くのは好きだ」
「…………」
「んだよ?」
「…なんでもない」
近くにありすぎるのかな。
言う事も、訊くことも出来ず、苦しくて、それでも並んで歩きたいと思う。
「やっぱ、特別なんだろうな」
「……え?」
「俺がこんだけゆっくり歩いてやるのって、母ちゃんと直子と……お前だけ、かな?」
(2019.4.15 twitter投稿)リメイク
[4回]
眩しくて目が覚めた。
カーテンの隙間から差し込む光が白い頬を照らしていた。
生え際に手を当ててそれを遮る。
眉、目、鼻、口……。
「ったく。もうちょいここをこうしたいとか、全然ねえのな」
時々、綺麗過ぎて怖くなる。
理由もなく泣きたくなる。
「…ん……」
「悪ぃ。起こしちまったか?」
「ふぁぁ……。腹、減った。……な、なに? 寝癖すごい?」
馬鹿みたいだろ?
俺は、お前の欠伸とか、ぐしゃぐしゃの髪とか、そういうのに安心するんだぜ。
「日向さん、寝癖すごいよ」
「そうか?」
「勿体ないからそのままにしといてよ」
なあ、おまえも同じだって思っていいか?
だって、生活を共にするってこういうことだろ?
「なんかさ」
「だよな」
「まだ何も言ってない」と下げた目尻にキス一つ。
(2019.4.14 twitter投稿)リメイク
[4回]