時折、薄っぺらい月が雲の隙間から顔を出す静かな夜だった。
そろそろ見頃じゃないかと、近くの公園に夜桜を見に行った。
少し離れた場所に桜の名所はあるし、人影はまばらで屋台があるわけでもなければライトアップされているわけでもない。
シーソーとブランコ、小さな砂場の横に水飲み場。
それを見守るようにポツンとベンチがあるだけだ。
「桜、少ねぇな」
「そうだね」
「やっぱり、あっちの……」
ふわり、と頬が温かくなった。
「バカ。こんなところで」
俺は笑いながら言ったのに、
「ずっと大切にするから」
真顔で言うあいつに、
胸のあたりが苦しくなって、
月も桜もブランコも揺れた気がして、
「帰るぞ」
夜露に湿った地面を蹴ることしかできなかった。
(2019.4.9 twitter投稿)リメイク
[2回]
レッズ戦の後、明和に行った。
建前は祖母の見舞いだが、急を要するわけじゃない。
「たまには顔を見せなさい」と母から電話があっただけだ。
途中、直子ちゃんを見かけた。
家まで歩いて二十分もかからない位置だったし、そこでタクシーを降りた。
一通り決まりきった挨拶を交わした後、自然と彼の話になった。
テレビや新聞、雑誌……彼の名を見かけることが少なくなってから半年になる。
「兄ちゃん、ユベントスに復帰できる?」
「あの人なら大丈夫」
「支えてくれる人とかいるのかな?」
「さあ。でも、幸せにするよ」
俺が、という言葉は飲み込んだ。
代わりに「誰かが」をくっつける。
「若島津さんみたいな女の人がいればいいのに……」
「え?」
「兄ちゃんもおんなじことを思っているんじゃないかな」
「男でごめんね」
「え」と声を上げた直子ちゃんの髪が風に揺れた。
遠くを見つめるような眼差しにもう一度声に出さずに言った。
『俺が、幸せにするよ』
見上げた空は抜けるように青かった。
お題:幸せにするよ
(2019.4.8 twitter投稿)
[2回]
「日向くんに言っちゃった」
ふいに飛び込んできた彼の名前。
教室の隅、数人の女子が固まりヒソヒソヒソヒソ。
「どうだった?」
「ダメだったぁ」
あーあ、可哀想に。
なんちゃって。
「サッカーのことしか考えられねえって言われた」
「お決まりのパターンね」
そうそう、お決まりです。
「でもさ、ほんとにいないのかな、好きな人」
いるよ。
「恐ろしく理想が高いんじゃない?」
そんなことはないでしょ。
「あー、そんな感じ。若島津くんもそうだよね」
「え?俺?」
「理想高そう」
「どうかな。目標は高いところにあるけど」
「恋の話だよ」
「ああ、そう」
「ねえ、日向くんてホントに好きなコいないの?」
「本人が言ってるならそうなんじゃない?」
「そうとは限らないじゃない。若島津くん、何か聞いてない?」
「聞いてないな」
「なーんだ」
なんだと言われてもねぇ……。
俺のもんだし、て言ったらどんな反応するかな。
「日向さんは俺が好きなんだよ」
「ええっ?」
「なんてね」
「若島津、何やってんだ? 部活遅れるぞ!」
「はーい」
「日向さん、俺のこと好きでしょう」
「今さらなに言ってんだよ」
ほらね。
「こら、あんまりひっつくな」
「いーじゃん、男同士なんだから」
「お前、変なもんでも食ったのか?」
(2019.4.8 twitter投稿)リメイク
[4回]
「なんだぁ?これ」
「五分以上って…ちょっ!日向さんっ」
んー、んーー、んーーん、んー?
「はい、終わりー。ヤベェ、ヤベェ。五分いっちまうかと思ったぜ」
「え?…っ、っ」
んーー、んんー、んーー、んん?
「はい、終了。今度もギリだったな」
「あの…」
「んだよ、三回目いくぞ」
「ちょっと待ってよ、わけわかんない」
「なんで、わかんねーんだよ。おまえ、バカ?」
「バカってなんだよ、バカって」
「だーかーら、五分以上キスしなきゃ出られない、の反対を考えろよ」
え?これ、トータルでじゃないの?
「次、行くぞ!」
んー、んーー、ん、ん、んー…
「日向さん、小泉さんが、
タ、タケシッ!
「あ、あの…」
「し、仕方なかったんだ。出られなくなるところだったんだ。五分だぞ。五分も日向さんと…」
て、外からは開くのか?
「タケシ、おまえにもチューしてやるか?」
「え?日向さん、いいんですか?」(ポッ///)
「あんた、なに言ってんだよ」
「冗談だ」
「言っていい冗談とそうじゃない……んっ、ん、んんーんーー…
「あの、俺はどうすれば…」
小次健は『5分以上キスをしないと出られない部屋』に入ってしまいました。60分以内に実行してください。https://shindanmaker.com/525269
(2019.4.7 Twitter投稿)
[1回]
妹が母親になった。
「健もそろそろ……」
聞き慣れた言葉なのに、赤ん坊の泣き声や家族の笑い声、柔らかな日の光にさえ胸が痛んだ。
「また、言われてしまったよ」
零れた声は彼の笑い声に乗って春の風に変わった。
「これ以上確かなものがあるか?」
「愛されているね、俺」
「愛しているからな」
お題:こんなにも
(2019.4.7 Twitter投稿)
[3回]
七夕は八月なんだぜ!
去年の七夕に何かを書いた気がして掘ってみたらありました。7/7に書いたみたい。
引用リツイートして、その後57577を書きました。
よろしければTwitterを見てみてくださいね。
名刺SSテキスト版は3つ追加しました。
もう少しおまとめアップも可能なのですが、ふらりと立ち寄った時にサササッと読めるものがあったらいいかなぁ~なんて思ったり。
とりあえず、繋ぎ的にお読み頂けましたら嬉しいです。
☆拍手ありがとうございました。
↓ メッセージのお返事です。
[2回]
快楽に溺れてしまう自分をみとめたくないのか、あいつは必死に声を押し殺す。
我慢した分だけ息が甘くなることに気づいていない。
「たまんねぇな。そういうおまえ」
顎に近づけた顔を後ろに引いて、ガッと突き上げると耐えきれずに「ああっ」と鳴いた。
鳴いたところで動きを止めたら振り返って俺を見た。
縋るような瞳を直ぐに隠したあいつの耳の後ろを舐め上げた。
軽ぅく腰を使う。
「どうしてほしいんだ?」
「…………」
「ねだれよ。俺がその気になるように」
漸く、そんな感じだった。
震える声であいつは言った。
「もっと、……深く……もっと、俺に……」
もっと言えよ。
もっと俺を欲しがれよ。
もっと、もっと、もっと……。
(2019.4.6 Twitter投稿)再録
[1回]
試合の前日はセックスはしない事。
最低限プライバシーは守る事。
家事の分担。
風呂の使い方。
同居を始めるにあたり、あれこれルールを決めた。
「シェアするんだからな。扶養家族じゃないんだから」
「家賃はいいけど、生活費の口座まではいいだろ?」
「駄目」
日向さん、こういう事は最初が肝心なんだよ。
放っておくと、俺に財布を出させなくなる。
どちらの名義で口座を開設するかで揉めて、結局、各々作って同じ額を預け入れした。
財布にカードが一枚増えただけだけで何となく嬉しかった。
生活するって感じがした。
「他にはないのか? 後から追加されるのは嫌だ」
「ないかな?日向さんは何か希望ないの?」
「うーん、そうだなぁ……。ゴミ、かな?」
「ゴミ?」
「ゴミと一緒に送り出すのはやめてくれ」
「そんな事しないって」
「いってらっしゃ~い。撮影頑張ってー」
「かったりぃなぁ~」
「文句言わない」
「へーい。じゃ、行って来るな。マイハニー♪」
何がハニーだよ。
だけど、出掛けのキスは蜂蜜に似ているかもしれないな。
あ、そうだ。蜂蜜切れてたんだ。
「帰りに蜂蜜買ってきてくれない?」
「了解」
「それと、ゴミよろしく」
「…………」
「何?」
「何でもねえ……。じゃな」
いいなぁ。
生活感ありありの後ろ姿。
あの背中を俺は守っているんだな。
(2019.4.5 Twitter投稿)リメイク
[2回]
「抱かせろ」
あまりにストレート過ぎて言葉がみつからなかった。
頭の上から降りてくる声に閉じたばかりの雑誌を開いた。
「嫌だったら殴ってくれ。殴ってトドメを刺してくれ」
絞り出すような声で彼が言った。
その後の言葉に俺は白旗を上げた。
「こうでもしなけりゃ諦めきれねぇ」
お題:無条件降伏
(2019.4.4 twitter投稿)
[1回]
こんばんは!
しばらく本宅入り浸り生活です。
ツイッターにもちょこちょこ顔を出そうと思ってはいるのですが、あ!お題SSを置いておきました。ちょっとしんみりしちゃいましたがそれくらい想っているということで。
名刺SSテキスト版のご案内記事にも書き足しましたが、ツイッター投稿日を記載してほしい、とお声がありましたので、小さく書いておきました。
古いお話は2007年から2012年にかけて書いたものです。
旧サイトにアップした日にちが不明のものもあるので、わかっているものも書きませんでした。
そのまま手を加えずに画像にしたものは「再録」、手を加えたものは「リメイク」と書いてあります。
最初の方に投稿したものは再録とリメイクだらけです。
SS部屋にあったものをブログに格納する作業と並行していたので新しく書けなかったんですよねー。
復活直後の日記も遡ってみたんですけど、ツイッターをやっていなかったら拍手でやりとりしていたんですよね。
今より多い?……と言うか、それしか手段がなかったので。まぁ、今も昔も変わらず、サイトはまったりゆるゆる~っとやっていきますので。
ツイッターを見ると何もやっていないような気分になるのですが、そんなことはないですよねー♪
と自分で言ってみたり。
☆拍手ありがとうございました。
↓ メッセージのお返事です。
[4回]