C翼二次創作/小次健love!  

149.『足音』(名刺SSテキスト版)

体格に似合わず若島津は足音を立てない。
気配を消すのも上手い。
気づいた時には、隣にいたり、急に背後から声をかけられ茶を吹き出したこともある。

「俺のクラスより進んでるんだね」
「うおっ」

英語の教科書の上に落ちたシャーペンがコロコロ転がって机の端で止まった。

「びっくりさせるなよ。忍者かよ」
「忍者って……何度か声をかけたけど?」
「本当か?」
「ホント、ホント」

コイツが足音を立てないのは本当だ。

「日向さん、最近多いよ」

だけど、ここ数ヶ月、やたらと物を落としたり、変な声を出すのは俺のせいかもしれない。




(2019.10.9 twitter投稿)

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148.『きっと、たぶん』by反町(名刺SSテキスト版)

「ごめん、ちょっと待って」

そう言って解けた靴紐を結ぶ指先を見下ろす目。

「先に行ってるぞ」

小さくなる背中を追う目。

「あのさ」の後の小さく空いた間。
「日向さん」言葉の最後を引っ張った時。

こいつらは同じなんだと思う。
だから、いい方に変わる。
きっと、たぶん、絶対────。




(2019.10.7 twitter投稿)
貴方は小次健で『きっとたぶん』をお題にして140文字SSを書いてください。
https://shindanmaker.com/375517

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147.『響く』(名刺SSテキスト版)

人伝いに彼が大変なのは知っていたし、自分もプロになってまだ日も浅かったから再会はもっと先だと思っていた。

「若島津」

マンションのエントランスホール。
後ろで響いた低い声に肩が上がる。
その声を聞き間違えることなどないと思いながら、腹の底から湧き上がる感情に直ぐに振り返ることが出来なかった。

「こっち向けよ」

恐る恐る振り返ると、彼はもう一度「若島津」と俺の名を呼んだ。

「なんだよ。幽霊見たような顔をしやがって」

彼は俺の顔を覗き込み、フッと短く息を吐いた。
キラリ、と微かに赤味を帯びた瞳が光る。

「なんで?」
「ここにいるか、か?」
「そう。だってあんた」
「口説きに来た」
「口説きにって……」

腰に回された手が熱かった。

「確かめろ」

押し付けられた唇は、すこし震えていた────。




(2019.10.3 twitter投稿)
『I love you』を小次健風に訳すと「今から貴方を口説きます」になりました。
#Iloveyouを訳してみた https://shindanmaker.com/730931


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141.『やべえよな』(名刺SSテキスト版)

無防備というかなんというか……。
溜息しか出てこない。
安心しきった顔をして、所かまわず寝顔を晒す。
元来、若島津はパーソナルエリアの広いヤツで、慣れない人間と一緒だと不眠に悩まされたりする。
ただし、ガキの頃から知っているせいか俺に対してはそうはならない。
寝顔を晒すだけならまだしも、「一緒に寝よう」と擦り寄ってくることもある。
弟みたいなもんだと思って中学までは大概付き合ってはきたが、さすがにきつくなってきた。

「自分の布団で寝ろ」

ベッドを占領するでかい男をゆっさゆっさと揺らす。
若島津は「んー」と言って布団に潜っていった。

「だから、なんでおまえは……」

ごろんと寝返りを打ち「だって」と言う。

「おそうぞ、コラ」
「いいよ」
「…………」
「肋を折られてもいいなら」

やべえよなぁ。
部屋、別にしてもらようかなぁ。
できるかどうかわかんねぇけど。



(2019.9.29 twitter投稿)



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