C翼二次創作/小次健love!  

102.『海の歌』(名刺SSテキスト版)

ところどころ歌詞を誤魔化しながら歌うのは、先月結婚した友人が花嫁に向けて自ら歌ったにも使われていた曲で、途中「おとちゃー
ん」と浦島太郎が……
「わかしまづーっ」
「は、はいつ」
イケネ。返事しちゃった。
「ンなとこいねぇでおまえも入れ」
やば。ばれてた。
「いや、俺は後で……」
「続き聞かせてやるから来いよ」と腕を引かれ、おろしたてのスーツが濡れた。
「アンタねえ」
「悪いな」
彼は少しも悪くなさそうに言って、さっきの続きを歌った。
いい声だよなあ。
深く張りがある。
ところどころ柔らかい。
甘さと苦味もある。
「声、やばいね」
「腰にくるか?」
自覚しているところがホント憎らしいけど……
たまんないね。





(2019.7.8 twitter投稿)
【小次健】
「もっと聴きたいな。君の歌」#
この台詞から妄想するなら2





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101.『七夕』(名刺SSテキスト版)

寮の玄関脇に笹竹が置かれた。
小さなテ1プルの上に短冊とペン。
書いたり書かなかったりその年によってマチマチだったが、たまたま若島津が忘れ物に気づいて部屋に戻り、ぼこっと空いた
時間に短冊に手を伸ばした。
「ごめん、ごめん」
言いながら靴を履くあいつに見つからないように短冊をポケットに入れた。
「日向さんは願い事書いた?」
「書かねーよ。お前は?」
「同じ。俺も書いてない。だって、見られたらイヤだし」
「だよな」
でもさ、とあいつが言った。
でもよ、と俺も言った。
交換した短冊には互いの名前しかなかった。
何をどうしたいかも書いていなかった。
「思いっかなくっさ。いるだけでいいって言うか……」
だよな。俺もそう思う。




(2019.7.7 twitter投稿)





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100.『aroma』(名刺SSテキスト版)

久しぶりに会った彼から甘い香りがした。
スンと鼻を啜ると照れくさそうに笑った。
「イヤか?」
「そんなことはないよ。ただ……「香りを着るようになったんだなあって思って」
家族と過ごした時間はとうに追い越した。
「いろんな香りがあったよね
「汗と埃しかねえだろ?」
彼は言ったけれど、
部室の匂い、寮の食堂の匂い、湿布の匂い、二人でロにしたもの、目にしたもの:
「洒落てみるのも悪くないね」
「そうか?」
そうだよ。
キザなアンタも、照れているアンタも、
……どんなアンタも全部好きだよ。



(2019.7.4twitter投稿)

小次健さんは【香水】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。#140字でSShttps://shindanmaker.com/670615






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99.『虫の声』(名刺SSテキスト版)

「蝉はどこにいっちゃったんだろうね」
読みかけの文庫をパタンと閉じてあいつが言った。
死んじまったんだろ、と言おうと思ったが、「どこに」という言葉がやけに耳に残って、何も言わずに次の言葉を待った。
「秋の虫に変わったね」「…そうだな」
他に言葉が見つからなかった。
ここで過ごす最後の夏が終わり、ここで過ごす最後の秋になる。
次にくるのはここで過ごす最後の冬で……
そしたら俺達はどこに行くんだろう。
あと少し我慢してればいい、そう思っていたけれど、我慢した先にはなにがあるのか…。
「日向さん」
「…………」
あいつは「ごめん」と言って、そのあと「俺、あんたの事が好き、みたいだ」と肩をすくめた。
先に言われると言えなくなるもんなんだな。
バカみたいに突っ立つ俺の唇をあいつの唇がフワリと掠めた。
それは夜風のように静かで、しっとりと濡れていた。
秋の虫の声をききながら、俺は次の夏を思い描いた。
やけに今夜は静かだ。
「夏が終わるね。……ほら、スズムシが鳴いている」
「違うだろ」
「……?」
「終わるのは『今年の夏』だ」



2019.7.2 twitter投稿)再録(初出 2009.8.25)






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98.『責任』(名刺SSテキスト版)

キスまでは合意のもと。
そこから先はわからない。
きづいた時には胸は開けていて、ジャージごと下着も下げられていた。
「嫌だったら蹴り上げろ。おまえを全部俺のものにする」
蹴り上げることは容易く、逆に彼を抱くこともできた。
それなのに……。
なんで、言ったのかなぁ。
「好きにしていい」と。
「日向さんがほしい」と。
「責任は俺がとる」
切なげに彼が言ったからだろうか。
はっきりしているのは、「彼が好き」
ただ、それだけ―――。




(2019.7.1twitter投稿)

小次健への今日の漢字テーマ【責任[せきにん]/①自分が引き受けて行わなければならない任務や義務②自分が関わった事柄や行為から生じた結果に対して負う義務や償い】#漢字テーマ https://shindanmaker.com/731136





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97.『紫陽花』(名刺SSテキスト版)

肩に傘を引っ掛けて写真を撮った。
「待ち受けにするのか?」
上から声をかけられて、
「ついでに撮ってあげようか?」と言ったら「一緒にな」と日向さんは隣にしゃがんだ。
「紫陽花が上手く入らない」
「ハハ」と笑った息がかかりそうだった。
ダメかな。
雨に紛れて「好きだ」と言ったら―――。




(2019.6.30 twitter投稿)

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96.『情熱』(名刺SSテキスト版)

俺の名前を呼びながら、
俺の背中に爪を立て、
腰を揺らし、
髪を見出し、
ぶっ倒れるまで俺を離さない。
知っているのは「俺」だけだ。



(2020.6.30twitter投稿)

小次健への今日の漢字テーマ【情熱[じょうねつ]/激しく高まった気持ち】#漢字テーマhttps://shindanmaker.com/731136


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お知らせ&拍手お返事

名刺SSテキスト版№95までUPしました。
twitterにはらくがきとか小ネタメモがあります。
文字書きの方はあまり進んでいません(殆どやっていないと言ってもいいくらい)
でも、気の向くまま筆の向くままのらりくらいとやっていこうと思っています。

再録本をご注文下さいました方、到着のご連絡ありがとうございました! 
拙い本ですがお楽しみ頂けたら嬉しいです♡
あまりくどいとドン引きされそうだし、事務的なメールですみません。
ご意見、ご感想などございましたらお気軽にお声掛けください。


☆拍手ありがとうございました。
↓ メッセージのお返事です


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95.『4th』(名刺SSテキスト版)

早いもので若島津と暮らし初めて四年になる。
正直、いい事ばかりじゃなかった。
調子がいい時もあれば悪い時もあるし、思うように結果を出せない時は八つ当たりもした。
スープが冷めない距離にしておけば良かったか……そう思った事もある。
だけど、これだけは自信を持って言える。
別れようと思った事は一度もない。
「お前もだろ?」
「なにが?」
あ、ご飯粒……。
「ガキみてえに米粒なんかつけんなよ」
「あ」
恥ずかしそうに口元に移動した手を払った。
指先にくっついた白い粒はなんとなく健気だ。
塊だと「飯」にしか見えねえんだけどな。
「いい。そいつは俺が食う」
こいつの口に入りそびれた飯粒を俺が食う。
こいつが抱えきれない事があれば、そいつも俺が食う。
こいつが泣きたい時は、こっそり泣かせてやろう。
今までこいつがそうしてくれたように。
「五年目突入だ」
「あっという間だったね」
今日も飯が美味い。
「日向さん、おかわりは?」
こいつがよそってくれた飯がすごく美味い。

(2019.6.24 twitter投稿)再録
サイト開設4周年(2010.12.1)にご挨拶代わりに書いたものです。





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94.『魔法のランプ』(名刺SSテキスト版)

ストーリーもわかっているし、アニメ化もされた映画。
誘うのは勇気がいったけど、たまたまチームメイトが「面白い、面白い」と騒いでいたし、隣にある横顔をチラリチラリと伺いながら「俺も観たいな」と彼のジャージを引っ張った。
彼は一瞬驚いたような顔をして「俺とか?」と俺の顔を覗き込んだ。
跳ね上がった心音を聞かれてしまいそうで、「ごめん。無理しなくてもいいよ」と直ぐに打ち消したけれど、彼は「なんでだ?」と更に顔を近づけて、「無理じゃねーよ。猿、可愛いしよ」
と屈託無く笑った。
こんな感じで、一緒に『アラジン』を観に行ったわけだけど、二人で映画を観るのは初めてで少し落ち着かなかった。
映画は面白かったけど、彼が楽しんでるのか、それも気になったし、映像を追いながら時々思考が現実に移ったりした。
帰りの電車の中で日向さんが言った。
「3つ願いが叶うとしたら、おまえは何を願うんだ?」と。
急に言われて答えられなかった。
俺の願いは叶えられない類のものだから……。
「日向さんは?」
苦し紛れに聞くと、ソッコーで答えが返ってきた。
「家族が幸せでいること。おまえが長生きすること。俺が長生きすること」
車窓から差し込む西陽を映して光る瞳に、叶わないなあと思った。
「あのさ」
「なんだ?」
「願い事って、具体的に言わなくてもいいのかな?」
「さあな。……けど、生きてりゃどうにでもなるだろ?」
道は自分で切り開くものだし、彼といれば、どんな事でも乗り越えられる気がした。
だから俺は、ただ、そばに……。
ずっと彼の側にいたい。

(2019.6.30 twitter投稿)



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