隣のクラスの女子に告られた。
面倒くさくなるのが嫌で言葉を選んだ。
「部活で忙しい。余裕がない。気持ちは嬉しいけど、ごめんな」……こんな感じ。
たまたま若島津に見られて、あいつは何も訊かなかったし、俺も何も言わなかったけれど、
飯を食って、風呂を済ませ、時間割を見ながら鞄に教科書を突っ込んでいたら、いきなり何の前触れもなくあいつが言った。
「キスして」
「キスって……。おまえ、ふざけてんのか?」
笑い飛ばそうと思ったのに、
言わずに終わらせるつもりだったのに、
先にあいつが笑ったりするから、
扉の向こうから聞こえてきた話し声が不意に途切れたりするものだから……。
限界、だと思った。
「その手の冗談は嫌いだ」
顎を持ち上げると、あいつから笑いが消えた。
「日向さん、俺、ね」
俺の名を呼ぶ唇は震えていた―――。
(2019.5.31twitter投稿)
『I love you』を小次健風に訳すと「今すぐキスして」になりました。
#Iloveyouを訳してみた https://shindanmaker.com/730931
[1回]
例えば、普通に女と付き合っていたならば……。
まあ、そのコにもよるだろうけど、誘うのは俺、だよな。
慣れというのは恐ろしい。
誘われてばかりなせいか、誘い方がわからない。
ああ、どーしよう。
ムラムラなんだけど。
その気になってくれないかなぁ。
チラッと横目で見てみたけれど、 プレミアの試合にかじりついてる目は真剣そのもので、同業者でありながらプレミアよりセックスな今の自分が恥ずかしいやら情けないやら……。
「若島津、今の見たか?」
……え?
「み、見たよ」
「すげえなぁ。やっぱうめえわ」
やっぱり全然その気はないみたい。
おとなしく試合が終わるのを待つ、か。
んー、終わってもその気にならなかったら?
仕方がない。その時はその時だ。
今日はそういう日だったということで。
「あー、面白かった。録画しといてくれて助かったわ」
「俺も見たかったから」
「さ、飯にするか」
彼はすっと立ち上がった。
「ちょっと早くない?」
「腹が減ったんだよ。さっさと食って風呂入ってセックスしようぜ」
……え? え?
「す、するの?」
「するに決まってんだろ。お前にその気がなくてもする。つーか、俺がその気にさせる」
誘い方を忘れてしまうわけだ。
「今日はその気になんの早えなぁ」
「その気になんかなってな……ッーーーーー!」
(2019.5.30twitter投稿)リメイク
[1回]
名刺SSテキスト版は75までUPしています。現在75/338 いつ終わるんでしょう(泣)
twitterにまめ置いてあります。まめを書く暇があるなら宿題を、という感じですが、なかなか……。
エ口本を見ているところを母ちゃんにみつかりそうになり、慌ててベッドに隠す男子のように、PCを閉じる今日この頃。あまり調子の良いマシンじゃないだけにいつ壊れるか心配です。
☆拍手ありがとうございました。
↓ メッセージのお返事です。
[3回]
目つきは悪いわ、口は悪いわ、行儀も悪い。
そのうえ態度もでかすぎる。
夕飯時、寮の食堂。
向かい側の男はいつもと変わらぬ豪快な食べっぷり。
「貸せ」
いきなり俺の箸を取り上げて、ぶすっとから揚げに突き刺した。
「食え」
それから左手に箸を握らせる。
なんだかいつもと味が違う。
たぶん気のせいだろうけど。
「若島津、怪我か?」
二コ上の先輩の声が頭の上で響いた。
「え? いえ、違います」
日向さんは先輩をギロリと睨み付け、
「から揚げは突き刺して食うのがウマいんです」
ぶすっと自分の箸も突き刺した。
「何だよ、それ」
先輩はクスッと笑った。
「若島津、怪我したんならちゃんと手当しないと。見せてごらん?」
俺に差し出された先輩の腕を遮り、ずいと鼻先にから揚げを突き付ける。
「なんだよ、日向」
「食って下さい」
別に隠すような事でもないけれど、あんまり言いたくなかった。
部屋に入るなり怒鳴られた。
「無理しやがって、バカ野郎。魚だったら刺せねえだろうが」
ポンと湿布の箱を投げられる。
「日向さん、明日はカレーだから大丈夫」
「明後日は?」
「献立見ないとわからないよ」
「明後日は煮魚だ。明日中に治せ」
あんた、すごく優しいね。
(2019.5.29twitter投稿)リメイク
[2回]
チャリティゴルフだか何だか知らねえが、ボールと身体の間に介在物があるスポーツは苦手だ。
距離感が掴めねえ。
「日向さん、ちょっと」
「んだよ」
「ちょっとだけだよ。ちょっとだけなんだけど……」
「はっきり言え」
「下手。恥ずかしい」
「うるせー」
「真面目にやってよ」
「俺だって真面目にやってんだよ!」
「次のコースは池越えだよ。大丈夫かなぁ」
「レクチャーしろ」
「んー。クラブがあんたでアソコが俺。ボールは……」
「わかった。それがコツなんだな? 嘘じゃねえな」
「たぶん……」
ナイスショット! ……て、ホールインワンかよ。
(2019.5.28twitter投稿)リメイク
[2回]
寝起きが悪くて良かったと思う。
ベッドの上の段を確保して正解だった。
「起きろ、若島津。遅刻するぞ」
嘘つきな俺は、彼が起きたのも梯子に足を引っ掛けてくるのも知っているけれど、
「今、起きる」と横を向き、薄目を開けて寝ぼけた返事をする。
昨日も一昨日も一週間前も、毎日同じことを繰り返す。
あんた、やっぱり格好いい。
目の前にある顔ににやけそうになるのをこらえて、布団をはぐられ、腕を引かれるのを待った。
「起きろ」
「う……ん」
「ったく、手がかかる」
手がかかるんじゃなくて、手をかけてほしいの。
それくらいしたっていいだろ?
言わずに我慢してんだからさ。
「若島津、起きろって」
あ、届きそう。
キス、したいな。
したら、引くよな。
寝ぼけてたって事になんないかな。
やってみようかなぁ。
……え! なにっ!
「驚いたか! 目、覚めただろ?」
だから、そういうことすんなって。
俺がしたいキスは、ほっぺにじゃなくて唇になの。
ぺろんと舐められたいんじゃなくて、ぶちゅーってヤツなんだよ。
「どーせならもっと色気のあるのがいい」
「俺にそんな事を求められてもなぁ。いくらお前の頼みでもそれは無理だって。……先、飯行くぞ」
ぶん投げた枕が後頭部にクリーンヒットした。
「いってえな! 何すんだよっ」
ああ、怒った顔がたまんない。
俺、重症だな。
(2019.5.27twitter投稿)リメイク
[2回]
残り少なくなったコーヒーを一口啜ったあたりで携帯が震えた。
デスクに置きっ放しのそれに手を伸ばす。
メッセージアイコンの横に赤い吹き出しがあった。
『見えますか?』
並んでいた文字はたったの五文字。
それと、虹の写真。
隅に映り込んだ建物に、あいつの暮らす街を思い浮かべた。
「綺麗だな」とか、「そっちは雨が降ったのか」とか、浮かびかけた言葉を仕舞いこみ、時間を空けずに返信をした。
俺も虹を見ていたからだ。
『ずいぶん古い虹だね』
「出会った頃の虹だ」
『誰が撮ってくれたんだっけ?』
「かーちゃん」
短いやり取りの終わり、『じゃあね』の前の言葉が胸にズシンと響いた。
『知らない時間の方が短くなるね』
(2019.5.25twitter投稿)
虹が出ていたので思わず写真を撮って送りつける。すぐに既読がついて「こっちからも見えた」と虹の写真が送り返されてくる。
#今日の二人はなにしてる
https://shindanmaker.com/831289
[1回]
西日が射しこむこの部屋も、
廊下から聞こえてくるヤロウの声も、
「あちぃ、あちぃ」と言いながら、反町が下敷きを扇ぐ音も、
たぶん、俺が鉛筆を削るのも、
みんな、みんな暑かった。
涼しかったのはアイツだけ。
アイツが言った一言だけ。
「アイス、ソーダとメロン、どっちがいい?」
「俺、ソーダ!」
反町、オメエは暑苦しーんだよ。
「日向さんは?」
若島津、オマエは暑苦しくない。
「日向さん、どっち?」
やっぱり暑苦しくない。
「ソーダ? メロン? ねぇ、どっち?」
「どっちでもいいって。あっついからそんなに近寄んなっ」
「…………」
「……あ」
「ごめん」
「…………」
「ごめん。……あの、日向さん、アイス、ソーダとメロン……」
「い、いや。謝らなくていい。つか、俺が悪い」
やべえ。
汗、出てきた。
(2019.5.24twitter投稿)リメイク
[1回]
こんばんは!
twitterに名刺SSあります。朝、チャチャチャ―っと書いたものですが(汗)
今日は久しぶりに平泉に行きました。何年ぶりだろう???
ゆったり休暇中の家人と「今日は何を食べる?」「どこか行く?」……相談しながら近場をふらふら歩く毎日です。いやぁ~、ストレス半端なかったんでしょうね。顔色もよくなってきたし、すごく楽しそうです。田んぼや萩、ムラサキシキブ、曼殊沙華の写真などパチパチ撮ってきたので興味がありましたらtwitterを覗いてみて下さいませ。
☆拍手ありがとうございました。
メッセージの……その前に、
少し気になっていたのですが、頂いたコメントに合わせた書き方はせずどの方へのレスも同じ感じで書いています。
砕けた感じで書いて下さった方、堅苦しいと思わないでくださいね。
とても丁寧な書き方をして下さる方、慣れ慣れしいと思わないでくださいね。
書かれていることにはくまなくお返事したいのですが(寧ろ長すぎスミマセン)、あまり剥き出しにしたくないナと思った時はオブラートに包むこともあります。ご了承くださいませ。
では、いきますよ。
↓ メッセージのお返事です
(もしかすると同じ方だったかもしれませんが、はっきりしなかったので分けてレスしているものがあります)
[3回]
「日向さん……」
革靴に入りかけたあいつの右足が元いた場所に戻った。
「なんだ? 忘れ物か?
いいかけた「なにを?」は、柔らかく塞がれた。
「俺からしたい日もあるんだよ」
頭の隅で時を数える。
そうだなぁ……。
舌を追いかけるくらいの時間はありそうだ。
「毎日でもいいぞ。大歓迎だ」
(2019.5.23twitter投稿)
[2回]