目つきは悪いわ、口は悪いわ、行儀も悪い。
そのうえ態度もでかすぎる。
夕飯時、寮の食堂。
向かい側の男はいつもと変わらぬ豪快な食べっぷり。
「貸せ」
いきなり俺の箸を取り上げて、ぶすっとから揚げに突き刺した。
「食え」
それから左手に箸を握らせる。
なんだかいつもと味が違う。
たぶん気のせいだろうけど。
「若島津、怪我か?」
二コ上の先輩の声が頭の上で響いた。
「え? いえ、違います」
日向さんは先輩をギロリと睨み付け、
「から揚げは突き刺して食うのがウマいんです」
ぶすっと自分の箸も突き刺した。
「何だよ、それ」
先輩はクスッと笑った。
「若島津、怪我したんならちゃんと手当しないと。見せてごらん?」
俺に差し出された先輩の腕を遮り、ずいと鼻先にから揚げを突き付ける。
「なんだよ、日向」
「食って下さい」
別に隠すような事でもないけれど、あんまり言いたくなかった。
部屋に入るなり怒鳴られた。
「無理しやがって、バカ野郎。魚だったら刺せねえだろうが」
ポンと湿布の箱を投げられる。
「日向さん、明日はカレーだから大丈夫」
「明後日は?」
「献立見ないとわからないよ」
「明後日は煮魚だ。明日中に治せ」
あんた、すごく優しいね。
(2019.5.29twitter投稿)リメイク
[2回]
チャリティゴルフだか何だか知らねえが、ボールと身体の間に介在物があるスポーツは苦手だ。
距離感が掴めねえ。
「日向さん、ちょっと」
「んだよ」
「ちょっとだけだよ。ちょっとだけなんだけど……」
「はっきり言え」
「下手。恥ずかしい」
「うるせー」
「真面目にやってよ」
「俺だって真面目にやってんだよ!」
「次のコースは池越えだよ。大丈夫かなぁ」
「レクチャーしろ」
「んー。クラブがあんたでアソコが俺。ボールは……」
「わかった。それがコツなんだな? 嘘じゃねえな」
「たぶん……」
ナイスショット! ……て、ホールインワンかよ。
(2019.5.28twitter投稿)リメイク
[2回]
寝起きが悪くて良かったと思う。
ベッドの上の段を確保して正解だった。
「起きろ、若島津。遅刻するぞ」
嘘つきな俺は、彼が起きたのも梯子に足を引っ掛けてくるのも知っているけれど、
「今、起きる」と横を向き、薄目を開けて寝ぼけた返事をする。
昨日も一昨日も一週間前も、毎日同じことを繰り返す。
あんた、やっぱり格好いい。
目の前にある顔ににやけそうになるのをこらえて、布団をはぐられ、腕を引かれるのを待った。
「起きろ」
「う……ん」
「ったく、手がかかる」
手がかかるんじゃなくて、手をかけてほしいの。
それくらいしたっていいだろ?
言わずに我慢してんだからさ。
「若島津、起きろって」
あ、届きそう。
キス、したいな。
したら、引くよな。
寝ぼけてたって事になんないかな。
やってみようかなぁ。
……え! なにっ!
「驚いたか! 目、覚めただろ?」
だから、そういうことすんなって。
俺がしたいキスは、ほっぺにじゃなくて唇になの。
ぺろんと舐められたいんじゃなくて、ぶちゅーってヤツなんだよ。
「どーせならもっと色気のあるのがいい」
「俺にそんな事を求められてもなぁ。いくらお前の頼みでもそれは無理だって。……先、飯行くぞ」
ぶん投げた枕が後頭部にクリーンヒットした。
「いってえな! 何すんだよっ」
ああ、怒った顔がたまんない。
俺、重症だな。
(2019.5.27twitter投稿)リメイク
[2回]
残り少なくなったコーヒーを一口啜ったあたりで携帯が震えた。
デスクに置きっ放しのそれに手を伸ばす。
メッセージアイコンの横に赤い吹き出しがあった。
『見えますか?』
並んでいた文字はたったの五文字。
それと、虹の写真。
隅に映り込んだ建物に、あいつの暮らす街を思い浮かべた。
「綺麗だな」とか、「そっちは雨が降ったのか」とか、浮かびかけた言葉を仕舞いこみ、時間を空けずに返信をした。
俺も虹を見ていたからだ。
『ずいぶん古い虹だね』
「出会った頃の虹だ」
『誰が撮ってくれたんだっけ?』
「かーちゃん」
短いやり取りの終わり、『じゃあね』の前の言葉が胸にズシンと響いた。
『知らない時間の方が短くなるね』
(2019.5.25twitter投稿)
虹が出ていたので思わず写真を撮って送りつける。すぐに既読がついて「こっちからも見えた」と虹の写真が送り返されてくる。
#今日の二人はなにしてる
https://shindanmaker.com/831289
[1回]
西日が射しこむこの部屋も、
廊下から聞こえてくるヤロウの声も、
「あちぃ、あちぃ」と言いながら、反町が下敷きを扇ぐ音も、
たぶん、俺が鉛筆を削るのも、
みんな、みんな暑かった。
涼しかったのはアイツだけ。
アイツが言った一言だけ。
「アイス、ソーダとメロン、どっちがいい?」
「俺、ソーダ!」
反町、オメエは暑苦しーんだよ。
「日向さんは?」
若島津、オマエは暑苦しくない。
「日向さん、どっち?」
やっぱり暑苦しくない。
「ソーダ? メロン? ねぇ、どっち?」
「どっちでもいいって。あっついからそんなに近寄んなっ」
「…………」
「……あ」
「ごめん」
「…………」
「ごめん。……あの、日向さん、アイス、ソーダとメロン……」
「い、いや。謝らなくていい。つか、俺が悪い」
やべえ。
汗、出てきた。
(2019.5.24twitter投稿)リメイク
[1回]
こんばんは!
twitterに名刺SSあります。朝、チャチャチャ―っと書いたものですが(汗)
今日は久しぶりに平泉に行きました。何年ぶりだろう???
ゆったり休暇中の家人と「今日は何を食べる?」「どこか行く?」……相談しながら近場をふらふら歩く毎日です。いやぁ~、ストレス半端なかったんでしょうね。顔色もよくなってきたし、すごく楽しそうです。田んぼや萩、ムラサキシキブ、曼殊沙華の写真などパチパチ撮ってきたので興味がありましたらtwitterを覗いてみて下さいませ。
☆拍手ありがとうございました。
メッセージの……その前に、
少し気になっていたのですが、頂いたコメントに合わせた書き方はせずどの方へのレスも同じ感じで書いています。
砕けた感じで書いて下さった方、堅苦しいと思わないでくださいね。
とても丁寧な書き方をして下さる方、慣れ慣れしいと思わないでくださいね。
書かれていることにはくまなくお返事したいのですが(寧ろ長すぎスミマセン)、あまり剥き出しにしたくないナと思った時はオブラートに包むこともあります。ご了承くださいませ。
では、いきますよ。
↓ メッセージのお返事です
(もしかすると同じ方だったかもしれませんが、はっきりしなかったので分けてレスしているものがあります)
[3回]
「日向さん……」
革靴に入りかけたあいつの右足が元いた場所に戻った。
「なんだ? 忘れ物か?
いいかけた「なにを?」は、柔らかく塞がれた。
「俺からしたい日もあるんだよ」
頭の隅で時を数える。
そうだなぁ……。
舌を追いかけるくらいの時間はありそうだ。
「毎日でもいいぞ。大歓迎だ」
(2019.5.23twitter投稿)
[2回]
「甘い?」
「甘い」
赤くて形のいい苺を見つける度に、若島津は「はい」と俺に差し出した。
だから、俺もとびきり美味そうな苺を探す。
この中で一番旨い苺がこいつの口に入るように。
「食ってみな」
「甘い! これ、すごく美味しい」
特別でも何でもない、ちっぽけな一言が嬉しかった。
側にいるのが当たり前だと言われているみたいで、腰を屈めて俺の苺を選ぶあいつが愛しくて、俺もあいつの苺を選ぶ。
「日向さん」
「ん?」
「これ、食べてみて。自信ある」
渡された苺は最高に美味かった。
「うめえな」
「だろ? ……あ、これも良さそう」
若島津は長い指で葉を避けた。
ちょこんと顔を出した苺は大きくも特別形がいいわけでもなかったけれど、とても綺麗な色をしていた。
「葉っぱ、避けてるだけなのにな」
「何?」
だって、俺の為にしてくれただろ?
葉っぱなんか避けなくたって、そこにごろごろあんのにさ。
(2019.5.23twitter投稿)リメイク
[3回]
「いたたたた。やっぱり狭いな」
「だから言ったのに。狭いんだから入って来んなよ」
「いいじゃんよぉ。背中流してやっからさ」
「いいって。自分でやれる」
「ケチ」
「狭くて暑苦しんんだけど……。いたっ! もう、急に脚伸ばすなよ」
「風呂に入ってんのに身体がカチンコチンになるのは嫌だ」
「だから、別々に」
「おまえ、引っ越せ。もっとでかい風呂のあるところにしろ」
「これでもかなり広い方なんだけど。……い、痛いってば。じっとしていられないの?」
「どうしてでかい男が二人で入ることを想定して風呂を作らないかなぁ」
(2019.5.22twitter投稿)リメイク
[2回]
雨が好きです。
雨を見るのが好き。
傘越しに見る彼が好き。
雨が好きです。
雨が降った後の匂いが好き。
雨上がり、二人並んで歩くのが好き。
ほら、
水溜まりに写る俺は、とても幸せそう。
「ったく。お前はなんでわざわざ靴を汚すかなぁ」
雨が好きです。
雨で汚れた靴を二人で洗うのが好き―――。
だって、特別な事じゃないから。
(2019.5.21twitter投稿)リメイク
[0回]